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現場から(奄美新聞掲載)
「使う人目線」の欠如
県立球場「改修」に思う

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 6月18日、夏の高校野球鹿児島大会の報道者会議があった。毎年この会議では大会期間中、各社が使う県立鴨池球場の記者席の割り当てが決められる。昨秋からの球場改修工事で、バックネット裏に新たに記者室棟が増設されたため、この夏はどうなるか懸念していた。結局、従来記者室だった場所を使うことになった。これまでとほぼ変わらず仕事ができることに安どすると同時に、そもそも何のために増設までして改修工事をしたのか疑問がわいた。

 これまでの記者室はバックネット裏のいわゆる「砂被り席」のような位置にあり、観戦するには最高の環境だった。試合の写真も撮れるし、窓を開けて耳を澄ませば、監督や選手の声が聞こえ、チームの「息遣い」を感じることができた。記者としてはありがたい環境で観戦できた。
 新しい記者室は最上階の4階にある。見晴らしは良いが、グラウンドからは遠ざかり、エレベーターもないので移動に手間取る。高い位置から見下ろしてしまうので写真がちゃんと撮れるとは思えない。そもそも建物の入り口には常時カギがかかっているので、春の県大会、NHK旗とこれまで度々、球場に足を運んだが、新記者室に入ったことは一度もない。運用開始して4カ月あまりで、この建物が記者棟として稼働したのは、4月に巨人―横浜戦があった1日のみである。

 これまで記者室だった場所は2カ所に仕切りができて、監督室、主催者室、試合管理人室になった。今度の夏はこの3室を記者室として使う。試合を運営する県高野連も、試合前のメンバー表や試合後の公式記録を配布したりするのに今まで通りでいいので都合がいい。7月5日から始まる夏の大会は、どうやらこれまでと変わらず仕事ができそうなので、一安心なのだが、この球場を頻繁に使う高野連や地元メディアにとって使い勝手が悪くなる改修工事が、なぜ、なされたのだろうか?

 球場を管理する県体育センターによると「プロ野球などの興行を継続的に開催するため」というのが今回の改修の目的だ。既存の記者室は手狭で、収容人数が足りないため、増設の要望がプロ球団側からあったという。
 県では約1億9千万円かけて、記者室棟と一塁側と三塁側にロッカールーム棟を増設した。今年の3月から運用を開始したが、筆者も含めて改修後の球場に対する評判は、総じて芳しいものではない。
 ロッカールーム棟は観客の入場ゲートも兼ねている。これまでよりも多くの人数をさばけるような作りになったが、不可解なことに入り口を開閉する仕切りがない。その気になれば不正に入場することはいともたやすい。5月のNHK旗では出場チームの控え部員に見張り番をお願いしていた。夏の県大会決勝戦のラジオ中継を企画している放送局は、記者棟ができたため、電波が送れなくなる可能性を苦慮していた。

 「球場を使用する我々だけでなく、報道関係者など、様々な人の意見を取り入れて改修すれば、もっと使い勝手の良い球場になったのでは」
 県高野連の佃省三理事長は残念がる。記者棟を新設するというのに、常時この球場を使用する県内の各報道機関への意見聴取はなかった。高野連への聴取はあったが、設計図が出来上がった段階で「このようにしますから」という事後承諾のかたちだったという。抜本的な要望を伝える余地はなく、佃理事長は入場口から内野席まで直通通路の設置だけは提言したが、反映されなかった。

 「この球場に必要なのは観客席の屋根だ」
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 別の高野連理事は言う。県立球場には観客が雨露をしのげる屋根がない=写真参照=。一塁側と三塁側の内野席に通じる通路だけが、三階席が屋根代わりになってしのげる場になっている。試合中、雨が降ったり、鹿児島特有の降灰に見舞われれば、そこに観客は殺到する。本来通路である場所に人がたむろするのは、好ましい状況ではない。日差しが厳しくなる夏場は熱中症対策が喧伝される。年に何度あるのか分からないプロの興行のために記者棟を増設するぐらいなら、常時この球場に足を運ぶ観客のために屋根をつけることの方が、急務に思える。

 体育センターの担当者に屋根の設置について尋ねてみたが「球場の構造上、難しい」という。1970年に完成し、老朽化した球場に新たに屋根をつけるのは、建物の下部構造に予測不可能な荷重がかかる恐れがある。現実的には、埼玉の西武球場が球場全体を覆う屋根を別に建設してドームとしたような方式が考えられる。知り合いの建築士に尋ねてみたが、この場合でも、法規をクリアして理想に叶うものを作るためには、1、2億程度の予算ではとても建てられないほど費用がかかるという。

 一連の流れを追いながら感じるのは作った側の「使う人目線」の欠如だ。屋根の問題にしても、観戦者のことを考えて、スポーツ観戦の文化を本気で育てたいと考えるなら、真っ先に考えなければならない問題だろう。使い勝手の悪い記者棟を建てるのに2億近い額をかけるぐらいなら、じっくり腰を据えて球場を使う人たちのためになるものを作るべきではないか。
 2020年に国体開催を控え、県体育館を移設するスーパーアリーナ構想など、今後スポーツ施設の新設や改修が予想される。日本の「箱モノ行政」でとかく批判を浴びがちな国体などの「イベントのための施設」ではなく「使う人目線に立った施設」をお願いしたい。スポーツ施設のあり方を根本から見直す良い機会だ。

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テーマ:野球 - ジャンル:スポーツ

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