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ある一日(月刊トレーニングジャーナル掲載)
地域密着、底辺への「プロ」バスケットボール活動
プロバスケットボール選手・今井康輔の一日

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 今井康輔の肩書きは「鹿児島初のプロバスケットボール選手」である。「プロ」といっても、プロ野球選手やJリーガーのように年棒○千万の契約で華やかに活躍している選手ではない。そもそも鹿児島には「プロ」バスケットチームはまだ存在していない。日本バスケットボール協会が2007年秋に発足を予定している新リーグ(日本バスケットボールリーグ2部リーグ機構・JBL2)に加盟すべく、鹿児島県バスケットボール協会が立ち上げた中間法人・鹿児島県スポーツ文化振興協議会を中心に準備を進めている段階である(※08年2月、JBL2への加盟が内定した)。
 今井はそのチームに夢を託して鹿児島にやってきた。現在は鹿児島市内のスポーツクラブに勤務しながら「残りの時間はバスケにどっぷりはまって」己のスキルを磨く一方で、小中学生へのクリニックなど地域に密着し、バスケットの底辺拡大を目指した活動をしている。そんな今井のある一日に密着した。

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◇場所探し

 取材したのは、スポーツクラブでの勤務オフの日だった。元々は屋外でダッシュなどの瞬発力アップのメニューをやる予定だったが、雨のため予定変更。午前11:00すぎ、鹿児島中央駅の近くの体育館がちょうど空いていたため、現在所属している「鹿児島レッドシャークス」のチームメート藤原岳志とやってきた。
 チームの練習は週末2回程度なので、「プロ」としてのスキルアップは自己練習が基本。「練習場所を見つけるのが毎回ひと苦労です」。空いている公共の体育館を探したり、別のクラブチームが練習するのに混ぜてもらったりと、コートで練習できる機会を、あの手この手で工夫する。この日は運良くリングのある体育館で練習できた。シュート練習10本×5、1ON1、リングジャンプなどで約1時間汗を流した。コート練習のメーンはジャンプ力をつけること。「チームで僕の仕事はリバウンドなので高く跳ぶ事が不可欠。リングに向かってダンクをするつもりで跳んでいます。高く跳べないとレイアップもブロックされてしまいますから」。

◇下半身強化

 午後1時過ぎ、練習場所を鴨池ドームトレーニング室へ移動してウエートトレーニング。ここはキャンプでやってくる千葉ロッテマリーンズやラグビーの東芝府中なども利用しているだけあって、マシンなど設備が充実している。インフルエンザなどで体調を崩していたので、ウエートをやるのは1カ月ぶりだという。スクワットをやりながら「ハムストリングが切れそう」と苦笑い。フリーウエートを用いてのベンチプレス、スクワット、ツイストランジ、バランス腹筋など下半身強化を重点的に8種目こなした。「最近プレー中に体のコアの部分がぶれて、踏み込んでも脚に力が入らないような感じがする」部分の克服がウエートのテーマだ。常駐する桑原祐一インストラクターは同じスポーツクラブの同僚で、トレーニング時には親身になってアドバイスをしてくれる。ちなみに初めてここを利用した藤原は「今まで疑問に思っていたことが解決できた」と目を輝かす。「2人とも意識が高くて教えたことをすぐ吸収し、いい感覚を持っている。どんどんやろうとするのでこちらがブレーキをかけないといけないぐらい」(桑原氏)

◇オープンバスケット教室

 午後3時過ぎにトレーニングを終え、市内から車で約1時間半の南さつま市の鳳凰高校へ移動。川辺地区の中学生を対象にした「オープンバスケットボール教室」の講師をする。学校に指導者のいない部員や、レベルの高い指導を受けたい部員たちを対象にした教室で、前年度までは鹿児島市内のみの開催だったが、今年度から市外の地域でも開催することになった。週1回、午後7〜9時の2時間。「プロ」選手の指導とあって子供たちの目の輝きが違う。ボールハンドリングや、レイアップシュートなど、1回目の教室ということで説明を長めに、時折実演をしてみせながら、噛み砕いてコーチした。レイアップでは「しっかり踏み込むこと」「真上に跳ぶこと」「体が流れないようにすること」などを繰り返し説明する。参加した中学生は「『もらい脚』の使い方が分かりやすかった」「自分と同じことをしているんだけど違う迫力があった」と口々に感想を話していた。

◇「知ってもらう」活動
 
 大学を出て1年間は、関東のスポーツクラブで働いていたが、「バスケットの虫」がうずき出し、高校の恩師に相談したところ「鹿児島でプロを目指す活動がある」ことを知って、はるばるやってきた。
 野球やサッカーなどに比べると、県内での注目度は今ひとつだが、実は1万人を超える競技者登録があり、他のどの競技よりも多い。県協会などが中心になり、数年前から「地方から夢とスポーツ文化の発信」(鮫島俊秀理事長)を掲げ、スーパーリーグ所属のOSGを準ホームタウンとして招致して公式戦を開催したり、韓国・延世大や香港代表チームなどを招いて、地元の教員チームと対戦する国際交流イベントを開くなど、地域に密着したバスケット活動を地道に続け、プロチームができる下地を作ってきた。長崎出身の藤原も「スーパーリーグや海外のチームとやれたり、レベルの高いバスケットをやれる環境に恵まれている」ことに惹かれて、学生時代をすごした鹿児島に残った。
 今は「一人でも多くの人に、自分たちがプロを目指して活動していることを知ってもらうこと」(今井)を日々の活動で心掛けている。ジムや体育館で個人練習していると、190センチの長身は目立ち、同じ場所で汗を流している主婦やお年寄りから「何しているの?」と声を掛けられることがあるという。そのときは必ず自分たちの活動を熱く説明する。この日も体育館でバドミントンをしている主婦に尋ねられた。「いつか本当のプロとして活躍したときに『あの時話したあの人だ』と思ってもらえる」ための地道なプロモーション活動である。
 オープン教室も、今井らがバスケットで生計を立てていくための収益活動であると同時に、一人でも多くの子供たちにバスケットの面白さや楽しさを知ってもらって底辺を広げていく草の根の普及活動だ。今井が現役で活動している間に「年棒○千万のプロ選手」が誕生するためには、まだまだ多くの課題が山積しているが「今、ここで教えている子供たちの中から、そういう選手が出てくるために僕たちは活動していると思っています」。

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■プロフィール
今井康輔(いまい こうすけ)
 福岡県出身。小学生でバスケットを始め、福岡第一高時代はインターハイ、国体出場、東海大時代はインカレ5位、オールジャパン出場などの実績がある。大学卒業後、関東での1年間の社会人勤務を経て2006年3月来鹿。鹿児島初のプロスポーツ選手として活動する。ポジションはセンター。190センチ、84キロ。


「月刊トレーニングジャーナル」(ブックハウスHD社)07年6月号掲載
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