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現場から(奄美新聞掲載)
バスケットが開く可能性
知的障がいスポーツの現場から

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 第1回県特別支援学校対抗バスケットボール大会を取材した。発案者は長年、高校バスケットの指導者などで活躍した山元晃一さん。現在は県の国体準備課に勤める傍ら、知的障がい者の選抜チーム「鹿児島バルダーズ」の代表を務める。国体と同じ2020年に鹿児島で開催される全国障害者スポーツ大会に向けて、普及と強化を目指して始めた大会だ。
 国体に比べて、障害者スポーツ大会に向けての取り組みは遅れている。県内の特別支援学校にはバスケットに限らず、部活動がない学校も多い。大会を開催するにあたって、山元さんらは各学校を定期的に回って、バスケット教室を開いた。バルダーズの選手・スタッフやプロチームのレノヴァ鹿児島の選手らがコーチになり、今年7月から始めてこれまで20回の教室を開催した。12月19、20日は奄美でも開催する予定だ。

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 バスケットボールは初心者の子供たちに最初に教えるのは何か、ふと気になった。
 「パスを教えます」と山元さん。あらゆる球技の中でバスケットはボールが一番大きく硬い。まずは両手を開いてボールを正しくキャッチできることが第一歩。取り損なって身体に当ててしまうと、突き指をしたり、痛さで苦手意識を持ってしまうかもしれない。
 日常生活の中で、目線を上にする機会は案外少ない。訓練がない人間は上からくるものに対して本能的に恐怖心を抱く。その恐怖心を取り除く作業が大事になってくる。
 パスを決めるためには、相手をしっかり見ることが大事になってくる。まずは相手を見て、ボールを受け取れる用意ができているかを確認する。パスする前には、相手の名前を必ず呼ぶ。
 「ゲームをやるときは、『パスをしっかり決めたら1点』というルールを設けたりもします」と山元さん。知的障害を持つ子供は、自分のことに集中しすぎて、視野が狭くなりがち。他人とうまくコミュニケーションが取れないことも多い。パスの練習をすることは、視野を広げ、他者と協力して何かに取り組む訓練にも役立つ。

 大会には男子6チーム(7校)、女子2チーム(6校)が出場し、熱戦を繰り広げた。シュートが決まれば、満面の笑みを浮かべて喜ぶ。うまくいかなくて負ければ悔し涙を流す。子供たちの素直な感情表現から学ぶことがたくさんあった。
 「教わったことを、すぐにやろうとする姿勢は、健常者の子供たちの教室でも見習わなければと思いました」。
 大会のサポートで参加したレノヴァの氏家豪一選手は言う。シュートやドリブルのコツを教える。すぐにできるようになる子は少ないが、できるようになろうと、何度も何度もひたむきにチャレンジする姿勢が心を打った。
 男子の部で優勝した鹿児島高等特別支援のチームからは、バスケットが「チームスポーツ」であることを改めて教わった。バスケット部はなく、サッカー部やバドミントン部、野球部など、運動部の子供たちで合同チームを組んだ。練習は2回しかできなかったが「試合を重ねるごとにチームワークがよくなって、どんどんうまくなっていった」と丸山将監督は言う。
 試合中はよく声が出ていた。決勝の相手には経験者のエースがいたが、全員で声を掛け合い、2、3人で協力してマークして守っていた。攻撃の場面では全員が走ってリングを目指した。全員守備・全員攻撃の原点を見た。
 1人1人の力は小さくても、全員の力を合わせれば、大きなことをやり遂げる力になる。そんな体験を、バスケットを通じて学ぶことができたのではないだろうか。圖師良主将は「みんなで高めあうことができた。楽しかった」と感想を話す。「今後、就職活動をしていくのに、自信がついた」とも言う。

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 試行錯誤しながら無事大会を終えて、山元さんは「子供たちが『またやりたい』と笑顔で言ってくれたことが全て」と感想を話す。バスケットには、人間の持つ可能性を引き出す力があることを実感できた大会でもあった。

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テーマ:バスケットボール(日本) - ジャンル:スポーツ

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