鹿児島在住のスポーツ記者が発信するスポーツ情報サイト

ギャラリーショッピング
16正月特集・鹿児島ユナイテッド・前編
鹿児島初の「J」誕生
「もっと鹿児島をひとつに」への挑戦・前編
鹿児島ユナイテッドFC

151214正月特集01_035
 鹿児島ユナイテッドFC(鹿児島U)は2015年の日本フットボールリーグ(JFL)で第1、2、両ステージを合わせた年間4位で、J3参入条件となる年間4位以内をクリアした。J3ライセンスを取得、ホームゲームの年間入場者数3万人のノルマも達成し、11月17日のJリーグ理事会でJ3入会が承認された。

 「『サッカーどころ』といわれる鹿児島に、やっとJクラブが誕生しました」。

 德重剛代表は万感の想いで喜びを語り、男泣きした。
 Jリーグの発足は1993年。実に22年の時を経て、鹿児島にもついにJのクラブが誕生する。苦闘の末に、夢への入り口にたどり着いた15年シーズンを振り返り、チームスローガン「もっと、鹿児島をひとつに」の夢実現に大きな一歩を踏み出した鹿児島Uの挑戦をレポートする。


鹿児島U、15年シーズンの戦績・順位はJFL公式サイトを参照!
◇15年ホームゲーム観戦記

151214正月特集02_035
 15年、鹿児島UのJFL通算成績は18勝6分6敗の勝ち点60。J1名古屋などで活躍し、日本代表経験もある浅野哲也・新監督=写真=が就任当初掲げたのは「JFL優勝」「年間勝ち点70」「J3昇格」だったが、達成できたのはJ3昇格のみ。これが最も重要だったわけだが、それだけ今季の戦いが厳しかったことを物語る。
 筆者は、3月8日に県立サッカー・ラグビー場であった奈良クラブとの開幕戦から、ホーム9試合を観戦し、アウエーの2試合を、天文館であったパブリックビューイング(PV)で観戦した。観戦ゲームを中心に15年の戦いぶりを振り返ってみよう。

151214正月特集03_035
 開幕戦の奈良ク戦は、振り返ってみれば、今季を象徴する一戦だった。JFL新加入のチームを相手に、序盤は勝たなければいけないプレッシャーで動きが硬く、後半は主導権を握りながらも得点が奪えなかった。後半のアディショナルタイムに、途中出場のFW福島立也=写真左端=のゴールで、劇的な白星を挙げた。
 あのままスコアレスドローで終わっていたら、観客としてもフラストレーションのたまる展開だっただろう。だが、鹿児島実高を卒業したてのルーキーの、たった一つのゴールが極上のスポーツエンターテイメントに変えた。内容は反省点が多かったが「結果にこだわり最後までゴールを目指す」(浅野監督)姿勢を、開幕戦で示せたのは大きかった。

 第5節のファジアーノ岡山ネクスト戦は、MF柳崎祥兵の2ゴールなど4ゴールを挙げ、首位に浮上したゲームだった。1人1人がそれぞれの役割を果たし、ハードワークする姿勢が見る側にも分かりやすく伝わってきた。ちなみにこの試合は、記者としてではなく、チケットを購入して観客として楽しんだ。ビールとフィッシュ&チップスを片手に「週末に地元のプロスポーツチームの応援」を娯楽として楽しむことができた。
 第7節は引き分け、8節で初黒星を喫し、足踏み状態が続きそうだった第9節のヴェルスパ大分戦は、10日間で3試合のハードスケジュールをこなさなければならない中で、攻守にわたるハードワークが功を奏して、2―0の完封勝利を収めた。初めて中盤でコンビを組んだ赤尾公、山本啓人のダブルボランチが機能したゲームとして印象に残っている。
 このまま好調を維持していけば、ステージ制覇も十分狙えそうな雰囲気があったが、第11節のソニー仙台との首位決戦で敗れて、5位に後退してからは、厳しい戦いを強いられた。第13節はアウエーでSP京都にスコアレスドロー、第14節のHondaに0―3で敗れ3敗目を喫した時点で、第1ステージ優勝の可能性は消えた。
 だが最終節、アウエーのFC大阪戦を1―0で勝利したことが第2ステージに希望をつなげた。チームが初めてPVを企画。鹿児島Uの戦いぶりを熱心なサポーターと一緒にかたずをのんで見守った。鹿児島に居ながらにしてチームやサポーターと一体感が味わえた。

151214正月特集04_035
 第2ステージに入ってからは、高校総体や高校野球の取材などで、なかなか観戦に行けなかった。約2カ月半以上ぶりに観戦した第6節のMIOびわこ滋賀戦は、ちょうど高校野球の決勝戦の翌日だった。台風や雨の影響などで、コンディションは悪い。試合もなかなか得点機もなく、このままスコアレスドローで終わりかけたアディショナルタイムに、DF冨成慎司がCKを直接ゴールに叩き込んだ=写真=
 第4節のソニー仙台戦は引き分け、第5節のファジアーノ岡山N戦は黒星。第2ステージ序盤戦にして早くも「内容よりも結果、勝ち点3を得ることにこだわらなければならない」(浅野監督)厳しい状況の中で「このチームに関わる全ての人の想いが詰まった必然のゴール」だった。試合後は監督、選手が会場の出口で心からの感謝を込めて、サポーターを見送る姿が感動的だった。

151214正月特集05_035
 初めて姶良で開催された第8節・FC大阪戦、第11節・ホンダロック戦も印象深い。大阪戦は後半、不可解なPKをとられ、絶体絶命のピンチをGK植田峻佑=写真右から3人目=の神技セーブで止め、2―0で勝利した。ホンダロック戦は今季、守備の中心を担っていたCB水本勝成が決勝戦を挙げた。初の奄美開催となった第12節のSP京都戦は気持ちが空回りして1―3で敗れ、第2ステージ制覇と年間王者の望みは絶たれたが、この時点では最多となる3075人を動員し、J3参入要件であるホームゲーム年間3万人の動員を達成した。
 第14節・奈良ク戦は第1ステージ最終戦に続く2度目のPVを実施。スコアレスドローに終わったが、この時点で年間4位以内が確定し、多くのサポーターと「参入内定」を喜んだ。
 今季唯一の県立鴨池陸上競技場開催となった最終節のマルヤス岡崎戦は、鹿児島Uというチームの歴史を物語るようなゲームだった。MF田上裕主将のゴールで先制し、後半、FW山田裕也が追加点を挙げ、途中出場のMF五領淳樹のゴールでダメ押した。田上主将は元FC鹿児島の元主将、山田はヴォルカ鹿児島時代から在籍する最古参のFWであり、アシストした赤尾はヴォルカの元主将だ。五領は鹿児島U2年目の今季の新加入であり、奇しくも4人とも鹿児島出身選手がスポットライトを浴びる活躍をした。今季最多となる8656人を動員し、JFL卒業・J3参入のいわば「最終試験」を3―1の白星で飾ることができた。

 「私も選手も、勝って当たり前という見えないプレッシャーとの戦いでした」
 最終戦後の記者会見で、浅野監督はそう振り返った。思い描いた戦いができたわけではない。優勝したソニー仙台、3位のHondaは、J昇格の意志を持たない企業チームで、長年Jを目指すチームの前に立ちはだかる強豪として「JFLの門番」とも称される。「門番」とは今季1分3敗で白星を手にできなかった。首位争いの大一番をものにできなかったり、下位チームなどの取りこぼしもあった。
 そんな中で浅野監督は「連敗がなかった」ことを大きな評価に挙げる。大きなプレッシャーがかかる中で「本来持っている勝負強さを発揮した証」と語る。
 今季は年間を通してスタメン、定位置で出場していたのは、CBの水本、トップ下の柳崎、ボランチの赤尾ぐらいで、あらゆるポジション、スタメンも流動的だった。「選手たちには、誰がどのポジションで出ても、仕事ができる準備をしていた」。
 日替わりでヒーローが生まれたのも、今季の大きな特徴だ。特にホームゲームは顕著だった。開幕戦の決勝ゴールを挙げたルーキー福島、絶体絶命のピンチを神技セーブで処理への流れを呼び込んだGK植田、守備の頑張りが勝因だった試合で決勝ゴールを挙げたCB水本、最終戦の田上、山田、五領「鹿児島トリオ」のゴール…鹿児島Uやその前身のヴォルカ、FC鹿児島を知っている人には、たまらなく心揺さぶるような劇的なシーンがホームゲームでは多かった。
 無論、選手たちがそんな演出をしようと意識したわけではない。だが浅野監督は「それも必然の結果」と言い切る。J3参入を果たすべく、フロントはライセンス獲得に全力を尽くした。観客動員も3万人の目標をクリアした。「裏方がこんなに頑張ってくれているのだから、僕らはピッチで結果を残すしかない」(田上主将)気持ちでチーム一丸となった結果が、観客を魅了する好ゲームにつながった。田上主将は「見ている人がそんな風に感じてくれていたなら、僕らもうれしい」と喜んでいた。

スポンサーサイト

テーマ:サッカー - ジャンル:スポーツ

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://spokago.blog68.fc2.com/tb.php/1683-e1750654
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック