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Bリーグ・大河チェアマンに聞く
「レノヴァはチャンスを生かせ!」
「小さく生んで、大きく育てる」
スポーツ経営の「プロ」に学ぶ(大河正明氏・Bリーグチェアマン)

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 この秋に開幕する男子プロバスケットリーグ・Bリーグの大河正明チェアマン=写真=が鹿児島にやってきた。来季からBリーグ2部に参入するレノヴァ鹿児島の活動を視察し、伊藤祐一郎知事や森博幸市長らにも会い、リーグへの理解と協力を求めた。
 元銀行マンという異色の経歴を持ち、プロサッカーのJリーグの運営にも長く携わった日本でも有数のプロスポーツ経営のプロフェッショナルだ。大河氏にBリーグとは何か、レノヴァ鹿児島を中心とする鹿児島のバスケットは何を目指すべきかを聞いた。

 伊藤知事や森市長にも会われたそうですが、どのような印象を持たれましたか?

 一昨年、サッカーの鹿児島ユナイテッドFC(鹿児島U)がJリーグの百年構想クラブに認定されたときもお会いしています。今回、鹿児島UがJ3に上がったこともあり、地元にプロチームがあることを肌感覚として理解されていると思いました。レノヴァに対する期待も強く感じました。

 Bリーグとはそもそもどういうリーグでしょうか?

 この10年間、日本の男子バスケットは、NBLとbjという2つのリーグがあってトップリーグが2つに分かれているということで、国際連盟から制裁を受けた時期がありました。制裁解除の条件として1つのリーグにすることがあり、新しくBリーグが立ち上がるきっかけになりました。
 しかし今までのNBL、bjの延長ということではなく、我々も試合方式、マーケティングなど、これまでの5倍、10倍の規模で運営できるリーグにしようと努力しているところです。

 Bリーグが日本のスポーツ界にもたらすものは何でしょうか?

 バスケットに関していえば、日本の男子代表の強化です。オリンピックや世界大会で通用する力をつけることを目指しています。
 また、お金を払って多くのお客さんに見に来てもらえるために、エンターテイメント性を重視します。毎試合勝つことは難しいですが、勝っても負けても「見に来て良かったね」と言ってもらえるようなエンターテイメント性を重視した男子のトップリーグにしたいと考えています。
 Bリーグは、Jリーグに続いて地域に根差したプロスポーツクラブの誕生を意味しています。サッカーとバスケットと協力して、スポーツの持つ力を発揮し、日本をもっと精神的にも豊かな国にしていきたいです。

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 地域にプロスポーツがあるということは、どういった効果、影響を地域にもたらすとお考えですか?

 自分たちの住む身近なところにプロの選手がいる。彼らが学校訪問や施設訪問をしてくれる。そういったことで、そこに住む人たちが彼らのことを誇りに感じるようになる。そんな選手たちが所属するチームが毎週やっている試合を見に行くことが楽しみになり、地域を盛り上げ、元気にする。そういう力をプロスポーツは持っていると思います。
 もともと日本の子供たちのあこがれの職業NO1はプロ野球選手でした。今はプロサッカー選手が一番になっています。バスケットの競技人口も、特に中高生年代はサッカーと同じぐらいの人口がありながら、「プロバスケット選手」は子供たちの憧れの職業として挙がっていなかった。これからはプロ野球選手、Jリーガーと並んで、小さな子供たちが目指す職業の代表格になれるよう頑張っていきたいです。

 Bリーグは参入の条件に、ホームアリーナを作ることを掲げています。

 スタジアムでもアリーナでも、「ホーム」はとても重要です。選手、監督、チームスタッフはもちろん、ファンにとってもそこは自分の「居場所」であり「家」であるわけです。
 その「ホーム」が転々とするよりも、それを一つに定めて、そこを劇場空間にすることがプロスポーツには大事になってきます。
 「ホームアドバンテージ」という言葉もあるように、対戦相手が「ここはやりづらなぁ」と思わせるような威圧感があるホームアリーナを作ることは、我々の願いでもあります。
 アメリカのNBAでは2万人収容のアリーナが普通にあります。日本ではまだそこまでは難しいでしょうが、1部のトップチームには1万人規模の集客ができ、そこを満員にすることが、選手の年俸も上がり、バスケットを大きなビジネスにすることにつながってきます。
 日本は食事も美味しいし、安全で世界の一流国だと思いますが、スポーツの施設に関しては残念ながらアリーナ、スタジアムとも二流、三流国と言わざるを得ません。
 昨年中国でアジア大会がありましたが、中国では大学のアリーナに7、8000人の観客が入り、大きなビジョンが設置されています。どの選手が何点取ったなどのデータが瞬時に表示されるようになっています。日本もそういったアリーナができてこないと、スポーツが文化として定着していかないと思います。

 鹿児島にもそういう施設ができるといいのですが…

 「バスケットのための施設」と考えない方がいいと思います。コンベンションホールだったり、コンサート会場だったり、スポーツでいえばバスケットやバレーボールができる。そこに地域の人が集まって楽しいことがあり、街づくりの核になれるような場所ととらえることが大事だと思います。

 大河さんはJリーグにもいた経験があり、その経験をBリーグにも生かしていくのでしょうか?

 もちろん、Jリーグで培ったノウハウは活用したいと思います。しかし、Jリーグには2つ弱点があります。一つは親会社を持っていること。そういう球団は、トップが親会社の天下りポストになっており、それが発展を阻害している部分があります。
 もう一つはサービス業でありながら、お客さんに対するデータベースがないことです。これからBリーグではお客さんがどのようにしてチケットを購入されたのか、そのデータベースをとって、リセールにつなげる。そんな仕組みを考えています。後発のリーグだからこそできることをいろいろと考えていきたいです。

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 来季からレノヴァがBリーグ2部に参入します。しかし現状、レノヴァはリーグ最下位であり、運営規模も小さいクラブです。今後、レノヴァがBリーグを戦っていくために何かアドバイスをお願いします。

 サッカーの鹿児島Uを思い出してください。2、3年前はクラブが2つに分かれ、毎日の資金繰りにも苦労しているクラブが、一つに統合したことで今Jリーグを目指すチームへと変貌しました。
 今、レノヴァは2部ですが、大きなチームになっていくために、より多くのスポンサーや、ファンの応援をお願いしなければなりません。
 そのためには選手を強化することも大事ですが、クラブを運営するスタッフ人材にも投資して欲しい。いろんな意味で今レノヴァはチャンスを握っていると思います。小さく生んで大きく育てることが大事です。

 これからのレノヴァに期待することは何でしょうか?

 鹿児島は野球も、サッカーも強くて、いろんなスポーツを見たいと思っているお客さんは多いと思います。ウインタースポーツのBリーグで戦うレノヴァは、そんな人たちを満足させるものを提供して欲しいし、それができる力を持っていると期待しています。

 元銀行マンという異色の経歴を持ち、JリーグにBリーグ、日本では未だ発展途上にあるプロスポーツビジネスの最前線にいる人だけあって、今後のバスケット界や日本のスポーツ界、鹿児島が今後どうあるべきかについて様々な示唆に富んだ話を聞くことができた。
 例えば今後、Bリーグ自体にスポンサーがつき、各チームに1000万、2000万の分配金が渡せるようになったとする。大河氏はそれを「選手ではなく、まずはスタッフに投資すべき」と説く。お金ができれば優秀な選手や、指導者を連れてくるというのはありがちな発想だが、営業や広報といった優秀なスタッフをまず育てていくことが、リーグ成否のカギを握っているといっても過言ではない。1、2億、稼げる優秀なスタッフがいて、初めて選手に投資してチームを強くするという考えだ。
 レノヴァに限らず、日本のあらゆるスポーツチームが四苦八苦しているであろう「スポンサー集め」に関しても、核心的な意見を聞くことができた。
 営業のやり方には2通りの方法があるという。一つはCSR(企業の社会貢献)的な考え方。鹿児島のチームだから応援してほしいという発想だ。これはとても大事な要素だが、それだけでは千万、億単位のスポンサーをお願いするのは困難である。
これから大事になっていくのは「スポンサードすることによって、どのようなメリットがあるのかとクラブと一緒に考えていく」という方法だ。ユニホームスポンサーに○億円払って、それ以上の売り上げが見込めるだけの媒体力があれば、話は早い。だが、残念ながらそれだけの媒体力のあるスポーツチームは、日本ではサッカーの日本代表だけといわれている。では、単純な売り上げだけではない「価値」をどう生み出していくか。クラブはそれを提供することが営業になってくる。
 Jリーグの冠スポンサーになった明治安田生命は、全国に支社があり、それぞれがその地域にあるクラブのスポンサーになっている。そのことが社員のモチベーションアップにつながるというのがスポンサードする理由だ。そういったものを今後、レノヴァは鹿児島の企業、団体に対してセールスすることが求められる。
 レノヴァの営業方法についても、ユニークなヒントをいただいた。鹿児島が観光をPRしたいなら、ユニホームに何か鹿児島の観光をPRするものを掲載する。アウエーで遠征に行った先では、必ず観光物産展や観光PRをする。そういった事業をしたいので県や市にお金を出してもらえないかという営業である。
 バスケットはフィリピンや台湾、中国、韓国などアジアの国々でも盛んな競技だ。例えばアジアのどこかのクラブと提携を結ぶことで、アジア市場を開拓したい企業とのタイアップができるかもしれない。

 そう考えると鹿児島はかつて教員クラブ・レッドシャークス時代にサミットで香港のナショナルチームや台湾のクラブチーム、中国や韓国の大学などアジアのチームを呼んで、サミットをやった実績がある。まだ日本のバスケットのトップリーグが迷走していた時代に、アジア独立リーグをやろうと模索していた進取の気勢がある。後発のリーグだからこそできる。鹿児島だからこそできることがある。今、日本のバスケット界が大きく変わろうとしている時期に、レノヴァがまず成功することで、鹿児島を盛り上げるチャンスにして欲しい。


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 【メモ】おおかわ・まさあき。1958年5月31日生まれ。京都大から三菱銀行(現在の三菱東京UFJ銀行)に入行。10年に退社し、Jリーグ入り。理事、常務理事などを歴任し、クラブライセンス制度導入やJ3リーグ創設に尽力した。15年9月からBリーグチェアマンに就任。

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テーマ:バスケットボール(日本) - ジャンル:スポーツ

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