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この人に聞く・長谷川氏・上
逆境をプラスに変えるメンタリティー・上
長谷川健志氏(男子バスケットボール日本代表ヘッドコーチ)
「しんどいからこそ、自分に役目が回ってきた」

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 2014年、男子バスケットボールの日本代表がアジア大会で20年ぶりの銅メダルを獲得した。15年のアジア選手権では18年ぶりにベスト4進出を果たし、16年のリオ五輪最終予選に出場する。世界はおろか、アジアでもなかなか勝てず、NBLとbjの統合問題で国際大会出場停止のペナルティーを科せられるなど、長い低迷期にあった日本バスケット界にようやく明るい兆しが見え始めた。14年4月から代表の指揮をとる長谷川HCの手腕によるところも大きい。その長谷川氏が15年12月、県協会主催の「2020年国体に向けて、体格や能力で勝る相手にどう戦っていくか」をメーンテーマとした講習会で来鹿した。
 NBLでも、bjでも「プロ」では一度も指揮をしたことがなく、大学界で頂点を目指しながら、プロを倒す「ジャイアントキリング」を目指した長谷川氏は今後、日本のバスケット界をどう導いていくのか? その生きざまから、鹿児島が学ぶことは多い。

 長谷川さんが日本代表を指揮するようになった頃は、日本代表はなかなか勝てず、統合問題のごたごたでFIBAの制裁を受けようかという一番大変な時期でした。そんな時期にHCを引き受けた理由は何だったのでしょうか?

 長谷川
 HCの話は5、6年前からありました。自分の大学での立場もあってなかなか引き受けられなかったのですが、今回が3回目の打診で「やるんだったらこれが最後だろうな」という気持ちで引き受けました。
 日本のバスケット界は制裁を受けようかという頃で、一番しんどい時期でしたが、「しんどい時期だったからこそ自分に役目が回ってきた」と考えています。順風満帆なときだったら自分に声はかからなかっただろうと。
 今代表にいる選手たちは、直接の自分の教え子もいますし、他の大学の選手でも選抜チームやユニバーシアードのチームなどで指導したこともある選手たちですから、彼らとともに代表で戦うのは、自分にとってもプラスになるだろうという心境でした。

 就任した最初の年にアジア大会20年ぶりの3位、2年目のアジア選手権でベスト4と好成績を残しました。

 長谷川
 これまでの日本の実績を考えれば、「アジアでベスト4に入る」というのは現実的な目標だったと思います。そこに2年続けて入れたことは、これから2020年に向けても大きな基盤になると思います。
 企業の活動なども同じだと思いますが、物事を達成するためには目標を掲げて一歩一歩前進していくしかない。前進することも大事だし、達したところから落ちないというのも大事なことです。その意味でもこれまでなかなか勝てなかったアジアで、2年連続でベスト4入りできたことは、選手の自信になったでしょうし、日本のバスケットの力が決してフロックではないことの証明にもなったと思います。

 この2年間で、日本の男子代表は何がこれまでと変わったのでしょうか?

 長谷川
 技術的な部分が爆発的に何か変わったということはないです。積極性が出てきたことや、忍耐強くなって、ひとことで表すならメンタリティーが変わりました。
 どんな技術も、体力やメンタルがベースになければ、生かすことはできません。日ごろの生活でも、ちょっと心の持ちようを変えるだけで劇的に変わることがある。小さな子供でも、おじいちゃん、おばあちゃんでも、生きている限り人間はそういう可能性を秘めている。その意味で、今回ベスト4に2年続けて入れたことは、代表の選手たちのメンタリティーが変わるきっかけになれたと思います。
 日ごろのミーティングでも、バスケットの話だけでなく、人生の教訓や、人としての在り方、組織論、歴史などを話すことが多いです。バスケットをやっている中にはいろんなことがある。思い通りにいかないこともたくさんあります。その中でそれをどうやって乗り越えようとするところに人間としての成長があります。
 「乗り越えよう」とただ頑張ることは誰でもできる。本当に大切なのは「どうすれば乗り越えられるのか」を考えて頑張り方を理解することです。
 日本のアスリートはそれがとても下手だと思います。ただ指導者から教えられたことをやるだけ。なぜそれをしないといけないのか、どうすればうまくなれるのか、考えながらやらなければ本当の上達はない。日本の教育はそれをおろそかにしていて、ただ言われたことをやればいいと思っている。それはただ教わっただけ。学ぶ姿勢、考える姿勢を大事にすることを日ごろから代表の選手たちには言い続けてきました。

 14、15年と2シーズン、アジアで戦って、どのようなことを感じましたか?

 長谷川
 就任した最初の14年のシーズンは、まずはアジアの中における日本の立ち位置を確認して、自分たちの課題が何であるかを確認するシーズンでした。1シーズン戦っていく中で、アジアの中で十分日本もやっていけることを確認できたし、課題も見えてきました。
 2シーズン目を戦うにあたっては、課題はもう十分理解できた。ではそれをどう克服していくかの作業に取り組みました。
 「課題を乗り越える」とよく言いますが、それはマイナスをゼロにすることでしかないと僕は考えます。課題を克服した上で、自分たちの良さは何であるかを理解すること。それをメディアやファンの人にも日本はこういうバスケットをするチームであることを分かってもらう。
 その上で最終的には日本のアドバンテージを作るという作業になってきます。「アドバンテージ」とは相手が日本と対戦した時に嫌がられるもの、「日本と対戦するとこういうところが嫌だ」と思わせるようなものに仕上げていくということです。

 具体的に見えてきた日本の課題とは何でしょうか?

 長谷川
 一番の課題はフィジカルです。身体のぶつかり合いに対して日本は弱い。日本だけじゃなく、高さのある中国を除けば、東アジアの国全体が抱えている課題です。
 メンタル的な面では積極性がない。失敗したらどうしようかと考えて消極的になったり、闘争心を表に出さないことも多い。闘争心は出していかなければ人に伝わりません。そういった面はこの2年間でだいぶ変わってきたと思います。
 これまでの代表に呼ばれた選手たちの中には、リーグを戦って、休む間もなく代表に呼ばれ、結果を出せなかったことを批判される。これなら「代表に呼ばれない方がいい」と考える選手もいたと聞いています。
 そういったことも14年にアジア大会で20年ぶりに3位に入ったことで、変わりました。代表がメダルを獲って喜んでいる写真を見ると、これまで代表に呼ばれてもいきたくないと思っていた選手でも、「自分もあそこの場にいたい」と思うように少しずつなってきました。

 これは日本のアドバンテージと思えるものは何でしょうか?

 長谷川
 チームでいえば組織力。個人の技術的なことでいえばシュートと球際の強さです。アウトサイドシュートの正確さは、韓国などがずっと上でしたが、今日本もだいぶ追いついてきて、14年のアジア大会では韓国を上回る3ポイントの成功率でした。
 15年のシュート力に関しては、数字的な成功率は残せていませんが、日本のアドバンテージになりうるという手ごたえはつかめています。

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 レノヴァの試合などを見ていても、シュート力の向上は大きな課題だと考えています。シュート力を上げていくカギとは何でしょうか?

 長谷川
 一番大事になってくるのは中高校生の指導者だと思います。今、日本の中高校の指導者で、シュートの打ち方を順序立ててきちんと教えられる指導者がどれぐらいいるでしょうか? バスケットの技術で一番大切なのはシュート、日本の場合はアウトサイドシュートが重要になってきます。小学生ではまだ筋力ないので難しいでしょうが、中学2、3年生ぐらいからきちんとしたフォームを作り上げていく、選手とコーチの作業が大切になってくる。
 高校の指導などをみていると、個人のシューティング練習になると、コーチは座ってしまったり、体育教官室に入ってしまう指導者がいる。これでは良いシューターが育つはずがありません。シュートの練習こそ、コーチがついて技術的なアドバイスをするべきです。
 シューターというのは特殊な能力です。日本の場合は学校教育のためか、全員に一律同じことをやるように指導してしまいがちですが、シューターはそれに特化した指導が最も求められるポジションです。これはと思う人材をピックアップして育てていく必要があります。
 シューターに必要なのは、3つのCです。1つはコントロール、2番目がコンセントレーション=集中力。そして最後はコンフィデンス=自信です。その1本が入るか、入らないかで勝負が決まるような、重い責任がシューターには課せられます。それを作り上げていくためには、練習と試合経験の積み重ねしかありません。シューターに求められる素養をもった選手を、指導者はピックアップし、そういった共同作業の積み重ねが、強力なシューターを育てる下地になります。(つづく)

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テーマ:バスケットボール(日本) - ジャンル:スポーツ

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