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現場から(奄美新聞掲載)
野球人口減、どう対処する?
「鹿児島野球ミーティング2016」に参加して

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 4月9日にあった「鹿児島野球ミーティング2016」に参加した。小学校のソフトボール少年団、少年野球、中学・高校・大学・社会人と県内のあらゆるジャンルの野球関係者が集い、野球界の将来について話し合う画期的な取り組みだ。主催したのは県の高校野球監督会。近年、野球人口の減少が著しいという問題に直面し、今後の野球界をどうしていくか、野球関係者が垣根を超えて集まって、語り合う場を作るのがこの会の主旨である。

 野球人口減を物語る端的な数字を紹介しよう。2005年度に6158人だった県の中学校野球部員数が15年度は3350人。10年間で約3000人の減少である。高校でも中学でも、特に鹿児島市外の地方の学校では、部員不足で連合チームでの出場は珍しくなくなった。中学では、鹿児島市内でも連合で出場する学校が増えている。枕崎市内には4つの中学校があるが、今年の卒業生野球部員は4校合わせて18人。うち3人は女子だ。ちなみに鹿児島市の坂元中野球部だった筆者の同級生は24人。「団塊ジュニア世代」の時代と比較すると、この25年間の急速な減少ぶりを肌で感じる。

 一番の原因が「少子化」にあるのは間違いないだろう。だが、それにしても野球人口の減り方のスピードが著しい。サッカーやバスケットなど他の競技の台頭が著しい。最近では錦織圭の登場でテニスをする子も増えているという。
 「親の負担の大きさがあるのではないか」とある高校の指導者は話す。野球は他の競技に比べて道具にかかる費用が高い。ソフトも、軟式野球も、オフシーズンがなく毎週末に「○○旗」などの大会があり、その度に親が弁当係、接待係などで駆り出される。中学校が終わる頃は子供も、親も野球に対する情熱が覚めてしまって、高校では野球をしなくなるという。
 無論これは一面的な意見で、全てがそうだというわけではない。原因を一つに特定できる問題ではない。ただ子供たちの野球離れが進み、野球人口が減っているという現実を、あらゆるジャンルの野球関係者が共通認識として持ったことに、今回このミーティングを開いた最大の意義があったように思う。

 では問題解決のために、どのような方法が具体的に考えられるだろうか。
 相当な難問である。まず押さえておかなければならないのは、日本の野球界の構造的な問題点だ。日本の野球界はプロ、社会人、大学・高校、中学…それぞれ別個の団体によって運営されており、全体を統括する団体がない。サッカーが、Jリーグも、高校も、幼児も、女子も、全てが日本サッカー協会の下にあるのと対照的だ。
 野球界は年代ごとに「輪切り」の組織になっていて、時にそれぞれが反目する関係になることもある。「雪解け」が進んだとはいえ、「プロ」と「アマチュア」との関係は常に一線を画している。高校野球の指導者が、中学生を指導することは、行き過ぎた勧誘行為を防止するために禁じられている。県の競技力向上策の一つに「中高一貫による指導」が掲げられている他競技の関係者から見れば、首をかしげたくなるような慣習がある。
 野球界がそうなった背景は、歴史的なものや、朝日新聞、読売新聞に代表されるメディアの利権も絡んで、複雑な様相を呈している。それを解き明かすにはとても紙幅が足りないので割愛するが、野球界の問題は、鹿児島だけで解決できないものも含まれており、鹿児島だけでやれることには相当な制約がある。

 だからといって、手をこまねいているわけにはいかない。現状の中で何ができるか、アイディアを出し、コツコツと実践を重ねていくしかない。
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 鹿児島実高の宮下正一監督は、今年のセンバツで高野連が「ドリームシート」を設けて小中学生を招待したことを取り上げて「あの中で野球ができたことは我々の励みにもなった。同じようなことを鹿児島の県大会でもできないか」と提言した。県中体連軟式野球専門部では「チーム鹿児島」をスローガンに掲げ、年1回全員が集まる研修会を開いている。県のレベルアップや、野球の魅力をどう子供たちに伝えていくかなどに、全体で取り組んでいる。
 筆者は、子供の頃に複数競技を掛け持ちできる環境づくりを提唱したい。物理的に子供の数が少ないなら、発想を変えて、子供がやれるスポーツを増やすのはどうだろう。ヒントになったのは、基調講演で日米教育サポートセンターの木下和孝会長が紹介したアメリカの少年野球である。アメリカはシーズン制になっていて、野球は2月末から8月まで。それ以降は、アメフトをやったり、バスケットやサッカーをやったりとシーズンでやるスポーツが変わってくるという。
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 現実的にアメリカと同じ制度を導入することは難しいが、例えば同じ学校内の違う競技チーム同士で交流会を持つことなどはすぐにでもできないか。鹿児島商高野球部では、冬季トレーニングの時期に、陸上部、バスケット部、相撲部など他の部の練習に参加する機会を設けている。OBで柔道整復師の竹下健太朗さんは「初めてバスケットの練習に参加して刺激になった」と言う。普段と違うことをやることは、新たな世界を開くきっかけになるかもしれない。大切なのは、身体を動かす楽しさを伝え、スポーツに能動的に取り組む子供たちを増やすことではないだろうか。
 野球ミーティングの発起人の一人である指宿高の谷口裕司監督は「5年先、10年先を考えたとき『あの時から鹿児島の野球界は変わった』と言われるようなものをこれから作っていきたい」と話す。筆者もメディアの立場で、子供たちの未来のためにできる提言を続けていきたい。

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テーマ:野球 - ジャンル:スポーツ

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