鹿児島在住のスポーツ記者が発信するスポーツ情報サイト

ギャラリーショッピング
現場から(奄美新聞掲載)
際立った伝統校の勝負強さ
延泊に抜本的な対策を

160814現場から_035
 先月の第98回全国高校野球選手権鹿児島大会を一言で表現するなら「長かった」ということに尽きる。大会期間中、雨による順延が6日あった。7月2日に開幕して、甲子園出場校が決まったのが26日。7月はほぼ高校野球にかかり切りだったような印象がある。
 異例の長丁場となった大会を勝ち進み、決勝を争ったのは鹿児島実と樟南、第1、2シードの伝統校だった。決勝戦は1―1のまま延長十五回でも決着がつかず、規定により引き分け。2日後に再試合という、こちらも98回を数える大会史上初めての出来事であり、長かった大会を象徴していたように思えた。再試合もまた1点を争う緊迫した好ゲームとなり、樟南が3―2で競り勝ち、3年ぶり19回目となる夏の甲子園への切符を手にした。

・守り勝った樟南
160726樟南・畠中_035
 優勝した樟南は、浜屋、畠中の左腕2枚看板を中心に「守り勝つ野球」(前川大成主将・金久中卒)を存分に発揮した。チーム打率は3割に満たなかったが、初戦から準々決勝まで4戦連続完封、準決勝まで5試合連続無失策と、鉄壁の守備からリズムを作っていた。
 対する鹿実は4番・綿屋主将を中心とする強力打線が持ち味で、樟南とは好対照なチームカラーだったが、樟南は浜屋、畠中の両投手の継投を駆使し、相手の持ち味を最後まで出させなかった。
 中でも背番号10の畠中優大の活躍が光った。最初の決勝では先発し五回を1失点で試合の流れを作った。再試合では逆に五回無死満塁の絶体絶命のピンチで浜屋をリリーフ。ここを無失点で切り抜けて、六回以降は強打の鹿実打線に二塁を踏ませなかった。
 畠中といえば昨夏初戦の鹿児島情報戦で先発しながら、熱中症のため途中降板し、初戦敗退の屈辱を味わった。この1年間は、浜屋の陰に隠れて、これといった結果を残せず「悔しい想いしかしていない」日々を過ごしていたが、最後の夏にこれらを取り返して余りある活躍をしてみせた。勝利を決めた瞬間は「今まで生きてきた人生で最高の喜びを味わった」と言う。
 前川主将をはじめ、奄美出身選手の活躍も顕著だった。積山水音(朝日中卒)は、準決勝・川内戦で九回に代打で登場し、貴重な勝ち越し適時打を放った。3年間、一度もベンチに入れなかったが、チームの裏方として献身的に尽くす姿と、自主練習でも最後まで黙々とバットを振る姿が評価され、最後の夏に背番号20で初のベンチ入りを叶えた。再試合では5番、右翼手で初スタメン入りを果たしただけでなく、甲子園では背番号9のレギュラー番号をつかみ、初戦の京都翔英戦では適時打も放った。東健人(亀津中卒)は再試合の六回途中から三塁の守備につき、好守で勝利に貢献した。
 川内戦が延長十三回の辛勝で、決勝も厳しい戦いになることが予想されたが、前川主将は「打線は水物。最後は守りのチームが勝つ」と力強く言い切った。山之口和也監督は「川内戦を勝ったことがチームの自信になった」と言う。この1年間、ここぞという勝負をものにできなくて苦節を味わってきたが、それをバネにして「守り勝つ野球」を磨き、捲土重来を果たすことができた。甲子園の初戦・京都翔英戦も、ピンチを好守でしのぎ攻撃につなげて快勝した姿にチームの成長を感じる。今後の戦いにも期待したい。

 敗れはしたが、鹿実の戦いも見事だった。最初の決勝の九回以降は毎回のように一打サヨナラのピンチを迎えながら、エース谷村を中心に十五回まで粘り強く守り抜いた。かなうものなら樟南と鹿実、両チームが甲子園で戦う姿を見たいと思わせた。今大会、薩南工、志布志、川内、鹿児島工、ノーシードの県立校4校がベスト8に入り、志布志、川内はそれぞれれいめい、神村学園と優勝候補の一角に挙げられる強豪校に勝って4強入りした。改めて夏になるとこれまでの実績関係なく、いろんなチームが力をつけてくるのを実感すると同時に、それらに勝って決勝に進んだ樟南、鹿実の伝統校の勝負強さが印象に残った大会だった。

・記憶に残る奄美勢
160717沖永良部3点目_035

160717-10_035
 今大会の奄美勢は大島、徳之島、沖永良部が初戦を突破したが3回戦で敗れた。上位の成績こそ残せなかったが、長く記憶に残るような戦いをやってのけた。
 何といっても初戦で第4シード鹿児島城西に競り勝った沖永良部の戦いぶりが、見事だった。雨で何日の待たされながら気持ちを切ることなく、最高の準備をして格上の強豪校に堂々と競り勝った。序盤のワンチャンスをものにして先制し、左腕エース奥間卓斗を中心に粘り強く守り抜いた。最終回のピンチも堂々と守り抜いた姿に前田直紹監督は「子供たちの人間的な成長を見た」と語る。この1年間県大会で1勝もできなかったが、奥間は「あの時負けて、本当に良かった」と敗戦を糧に成長した姿を示すことができた。
 雨による順延は奄美勢に大きな負担だった。沖永良部、大島、徳之島は試合のない状態で1週間以上の滞在が続いた。フィジカル、メンタル面でのコンディション維持の難しさがあった。沖永良部が3回戦で甲南に五回コールド負けだったのも、その影響が大きかった。
 野球だけでなく、延泊は離島のチームにとって大きな金銭的な負担となる。その現状が報道されたことで、いろいろな寄付、援助があったと聞く。そのこと自体は素晴らしいが、もうそろそろ、大会を主催する高野連として抜本的な対策を講じるべきではないだろうか。自己負担が基本としても、順延など不測の事態が生じた際の費用などは、何らかの形で補助するような制度は作れないものか。そんなことも考えさせられた大会だった。

スポンサーサイト

テーマ:高校野球 - ジャンル:スポーツ

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://spokago.blog68.fc2.com/tb.php/1900-d3d05536
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック