2月19日(日)スピードトレーニング

(きょうのメニュー)宮崎さん指導によるスピードアップトレーニング
土曜日は、バスケットボールのスーパーリーグの取材や鹿児島のバスケットプロ化の記者会見があったので、予定されていた12000メートルビルドアップ走のトレーニングができなかった。週末がスポーツイベントと重なってしまうのは、スポーツ記者の宿命である。SCCの練習でできなかった分は、自分でカバーするしかない。
※この連載は2006年2月から「スポーツかごんま」に掲載したものです。
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午後の練習は、陸上トレーニング指導の宮崎博史さんによるスピードトレーニングだった。宮崎さんといえば、今僕が活動しているSCCの太田敬介さんの師匠で、城山観光や徳洲会などの監督、全日本ジュニアチームのコーチなど、トップレベルの選手を指導するスペシャリストである。今僕が取り組んでいる長距離の練習とは趣向が違うが、同じ陸上だし、せっかくだから県内でもトップレベルの実力がある野球部のトレーニングに、素人の僕がどこまでやれるか、試してみたくて、いっしょにやらせてもらうことになった。
基本的なメニューはSCCでやっている基礎ドリルと同じである。ただ、同じメニューでもラダーの中でやることによって、より体全体の感覚を研ぎ澄ましたり、負荷を多くかけることで短時間集中してレベルアップを目指す。指導の中で宮崎さんがよく口にしていたのは「腕を前から後ろにしっかり振る」「ひざを上げて、上から乗り込んでいくように接地する」「切り返しを速くする」などであった。さすがに太田さんの師匠だけあって、言っている内容は通じるものがある。ラダー、ミニハードル、牽引走、インターバルのマーク走、牽引バウンディングなど約1時間のハードなトレーニングだったが、全てやりきった! 牽引する練習は、人数が1人余ってしまって選手に迷惑をかけたくなかったのでやらなかったが、その分、みんなが5本するところを牽引なしで10本やった。
どうも野球部員も、宮崎さんも「どうせすぐばてるだろう」と思っていたようである。しかし、僕もまがりなりにも陸上クラブ所属の選手として練習する習慣はついている。加えて持久力は相当ついているから、十分ついていけた。きついトレーニングでも笑顔でやりきろうと思っていたが、それなりにやれたので自信になった。ただ宮崎さんに言わせると「長距離の動きだった」とか。興味深い指摘で、僕の中では、スピーディーな動きをやっているつもりだったのに、人の目には長距離選手の動きに見えたらしい。自分では短距離の動きをしているつもりでも、このところマラソンをはじめ長距離の練習をしているから、筋肉も無意識のうちに「速く」よりも「長く」やれる動きをしてしまうのだろう。そういう発見ができたのもきょうの大きな収穫だった。
思う存分、汗をかけることは幸せだとつくづく思う。仕事面では、まだまだ生活の安定とは程遠く、遊んでる場合じゃないのだが、こういう時間が僕には理屈抜きに必要だ。ホークスのキャンプ取材をしたときに、川崎宗則が「毎日がキャンプでもいいぐらい楽しい。今死んでもいいぐらい野球が好き」と言ってた心境が分かるような気がする。僕も走っていたり、野球をしながら夢中になっているうちが至福の時間である。このまま事切れたら「苦しむことなく死ぬ」というある意味幸せな人生の結末だろう(周りの人には迷惑だろうが…)。人間は「遊ぶ人」=「ホモ・ルーデンス」であるといったホイジンガの説に納得した一日だった。
2月22日(水) 走りを「壊す」こと
(きょうのメニュー)動き作り→レペテーション(3000+2000+1000)→補強
「きょうの練習はポイントですよ」
竹内コーチがそういった。この日のメニューは3000+2000+1000を、それぞれ間に10分間のレストをはさみながら、1キロを3分40秒、35秒、30秒とペースアップして走る。「レペテーション」と呼ばれるトレーニングである。トラックレースに向けて、スピードアップを図るため「体にきつい」練習への挑戦である。
ウオーミングアップはラダーを使った基礎ドリルだった。日曜日に宮崎さんのトレーニングを受けたが、「走る」ことのメカニズムの基本は長距離も短距離も変わらない。「ひざを上げて、上から乗り込むような感じで接地すること」や「腕をしっかり前後に振ること」は宮崎さんも竹内コーチが言うことも共通している。トップレベルの選手を目指すなら、より負荷と時間をかけるのであって、正しい動きを身につけることはトップの選手であっても、我々のように楽しみで走る選手も同じなのである。
レペテーションのトレーニングでは高校生2人と競った。高校1年生のG君とT君である。きょうの練習は今まであまり体験していない1キロ4分を切るペースである。僕より力のある高校生と競っていけば、必然的にペースは上がるだろう。時計を見るよりは彼らと本気の勝負をするつもりで、練習に臨んだ。
1本目の3000は1キロ3分50秒ぐらい、2本目の2000は1キロ3分40秒ぐらい、最後の1000は設定通り3分30秒でいけたが、最初の500メートルを高校生についていく感じで走ったら、2周目でペースがガタ落ち。3000と2000はほぼ互角の勝負ができたが、最後の最後でスタミナの差が出た。2000メートルの最後の1周を走るときは、変な話だが「この練習の後で死んでもいい」ぐらいの気持ちで、自分のテンションを最高潮に高めて走り、ラスト100ぐらいをG君としびれるようなデッドヒートを演じた。最後は「負け」(ホンネは「勝ちを譲った」といいたいけどね…)たが、走り終えて息を整えながら歩いていると、思わず「気持ちいい!!」と言葉が出た。きょうの練習も楽しめてよかった。
最近竹内コーチから「自分のレベルを上げようと思ったら、自分が感じている限界を超えたペースで走らないといけない」とよく言われる。長渕剛はライブをやる前に必ず、本番以上のテンションでのどを壊してしまうほどのリハーサルをやるという。「『歌い切る』という表現を僕はよく使う」と話していたが、一度自分の限界をぶっ壊してしまうことでより高く磨かれた音楽性が本番のライブで実現するという。きょうも自分の中では走りを壊すような感じでがむしゃらに走ったつもりだが、竹内コーチに言わせると「まだ自分にブレーキをかけて走りが小さくなっている」らしい。きれいなフォームを身につけようとするあまり、無意識のうちにそうなってしまっているのかもしれない。このへんがなかなか難しいところでもあり、走りの奥深いところでもある。
あとで竹内コーチやSCCの太田理事長から「政さんはケガをしないですね」と感心された。考えてみれば、マラソンも走れば、たまに本格的な野球の試合や練習にも出ているし、ハードなトレーニングもすれば、犬の散歩なども考えれば、ほぼ毎日体を動かしていることになる。普通これだけ体を動かしていれば、どこそこ故障を抱えるものらしいのだが、おかげさまで今の僕にそれはない。
一番大きいのはオルタナでのトレーニングだろう。ハードなウエートトレーニングなどは全くやらないが、理にかなった正しい体の動きを身につけることを毎回テーマにやっているし、ちょっと無理しているかなと思ったら、ストレッチなどの処置も施してくれる。スポーツを「楽しむ」ために「ケガをしない」ことは今回の取り組みの中でメーンに掲げていることだが、期せずしてそれを他人に指摘してもらえたのはうれしいことである。これからレベルが上がっていけば、上がっていくほど、不思議なもので体は繊細になってケガをしやすくなるものだが、なるたけそうならないよう万全の心がけをしたいと思う。
※この連載は2006年2月から「スポーツかごんま」に掲載したものです。
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