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現場から(奄美新聞掲載)
「ドーム」より「野球ができるグラウンド」を
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 県の12月定例議会で、三反園訓知事が掲げたドーム球場構想に関して、興味深いやり取りがあった。
 鹿児島市郡区選出の宝来良治議員が「ドーム球場整備における不安」と題して質問。三反園知事は「子供たちに一流のものを見せたい。プロ野球公式戦やキャンプ、大規模コンサート開催などによって、交流人口増加や経済効果が見込まれる」とドームの必要性を説く。これに対して具体的な数字を挙げて、実現の見込みが厳しいことを問いただした。

 プロ野球の公式戦は12球団で各143試合、年間で計858試合がある。このうち各球団の本拠地以外での開催は、24試合、全体の2・4%しかない。数万人の確実な入場者数が見込めるホームゲームを削り、観客動員数が読めない地方開催を増やすことは球団にとって大きなリスクを伴うことであり「大きなマイナス要素をカバーできる球団は、現時点でないと判断せざるを得ない」(宝来議員)。コンサートに関しても、人口約60万人の鹿児島市で、数万人規模のコンサートを誘致する困難さを示す数字を列挙し「経済効果もかなり厳しい状況」とした。
 三反園知事は「検討委員会を設置して県民の声を聞き、県民の立場で考える」と答えるにとどまった。

 そもそもドームとは、どのくらいお金がかかるものなのか?
 10月12日付の南日本新聞は福岡、東京、札幌など既存のドームの建設費や稼働率、維持費などを詳細に述べている。既存の球場をドーム化した西武で100億円、最も高い福岡は760億円の建設費がかかる。新設のドームは数百億円規模の大プロジェクトになる。
 札幌の年間維持費が15年度で35億円。ちなみに県立鴨池球場を含む運動公園全体の維持管理費が年間約8000万円なので桁違いの額だ。果たしてこれほどの費用をかけてまでプロ球団のない鹿児島にドームを作る必要性があるのか、疑問である。

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 鹿児島の野球環境で真っ先に改善が必要だと思うのは、観客席の屋根だ。県立球場の観客席には雨や降灰をしのげる場所がなく、県大会の準決勝、決勝など観客の多い試合では、通路に人が常にたむろしている=写真=。日差しや雨を避けて観戦できる場所がそこしかない。仕事柄、記者席とカメラ席を移動する機会が多いので、通路に座椅子をおいて堂々を見ている人は移動の妨げになって困るのだが、裏を返せばこれも鹿児島のスポーツ行政の「失政」の象徴といえる。夏場の試合中、場内アナウンスで「熱中症対策を」と観客に呼びかけるのは何とも皮肉に聞こえる。野球人口の減少も著しいといわれる昨今、「野球をより快適に観戦する」文化を育てる必要性を感じる。
 プレーヤー目線でいうなら、ドームよりも「野球ができるグラウンド」の方がより県民のニーズがあり、更には野球を通じて交流人口を増やす経済効果もあると考える。
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 鹿児島市内は野球のできる公営球場が少ない。県立、市民と小野球場=写真=があるのみだ。小野球場は中学野球の公式戦、専用グラウンドを持たない公立高校や、社会人の軟式野球チームの練習や試合など幅広い世代で使用されている。だが土日に使用する場合は、半年前の抽選に参加しないといけない。「多い時は十数団体の抽選になる」と鶴丸高の徳重貴久監督。夏休みの遠征などで宮崎に行くことが多いが「市町村でも公営球場がある宮崎に比べると鹿児島は球場が少ない」と感じている。
 使い勝手の良い球場を市内にあと2、3カ所作れないものか。鹿児島市の公園緑化課によると、1996年度から00年度にかけて、小野球場を含む小野公園全体をリニューアルした。整備費用は約7億円で年間維持費は約500万円という。これは土地買収、周辺の遊具施設やテニスコート、駐車場などの整備も含むので、実際にはもう少し費用を抑えることは可能だろう。ドームより格安なのは言うまでもない。
 先日、ある講演で、鹿児島大野球部の中野泰造ヘッドコーチが「2、3月のキャンプシーズンなどに鹿児島に多くの大学や社会人チームを呼んで交流する」アイディアを話していた。その際にもネックになるのが「市内に硬式野球ができる場所があまりに少ない」ということだった。
 奄美では毎年、社会人のトップチームがキャンプに来ている。奄美高のエース蔵大樹君(2年)は、このときの野球教室で社会人のコーチから「140㌔ぐらいのボールは投げられるようになる」と言われたことがきっかけで、本気で練習に取り組むようになったという。何かと敷居が高い「プロ」を呼ぶことよりも、このように「アマチュア」同士の交流を広げることの方が、より現実的で、鹿児島で野球をする小、中、高、大学、社会人それぞれにメリットがあるのではないか。

 スポーツ界全体で考えれば、フットボール専用スタジアムや、県体育館に代わる総合アリーナの方が急務だ。今年、J2ライセンスの交付が見送られた鹿児島ユナイテッドFCや、Bリーグで戦う鹿児島レブナイズのためにも早期の実現が望まれる。フットボール専用スタジアム整備の要望は、鹿児島Uのサポーターらの活動で、約7万4千人の署名が集まった。その「民意」の重みを三反園知事にはぜひ感じて欲しい。
 プロ野球にせよ、コンサートにせよ、呼ぶ「一流」は県外頼みである。むしろ県内にある鹿児島Uやレブナイズを一流に育てることが、これからの鹿児島には大切ではないか。三反園知事が掲げる「良いものいっぱいの鹿児島を全国にアピールする」ことにもつながるのではないか。
 いろいろ「苦言」を呈したが、三反園知事がドーム構想を提案し、そのことでスポーツを基軸にした鹿児島の活性化、街づくりの議論が進むことは大いに歓迎すべきことである。ドームの是非は別にして、鹿児島の人たちがより多くスポーツに親しみ、身近に感じて、スポーツを通じて豊かな人生を送れるような環境づくりのために必要な英知を絞りたい。

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テーマ:野球全般 - ジャンル:スポーツ

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