FC2ブログ
NPO法人スポーツかごしま新聞社オフィシャルサイト

ギャラリーショッピング
「野球のまち」を訪ねて・中(奄美新聞正月特集)
徳島県阿南市に学ぶ
「スポーツを生かした町おこし」とは?

181128正月特集02_050
・西日本還暦野球の成功

 07年2月、四国アイランドリーグの徳島インディゴソックスの新チームお披露目会で岩浅市長が「野球のまち阿南構想」を発表した。野球を起爆剤にして町の活性化につなげることを、市が主体になって取り組むことを宣言したのである。
 岩浅市長に本格的な野球の経験はない。「日本シリーズの結果もあまり興味はない」という。だが「野球は生涯にわたって長く楽しめるスポーツ」であり、多くの人を呼び込める力を秘めていることは上田市を見て理解できた。
 その年の5月に構想の核ともいうべき新球場が完成。県南部健康運動公園内にできた球場で、名称は「JAアグリあなんスタジアム」=写真=。黒土、天然芝の本格野球場で電光掲示板には市の主要産業でもあるLEDライトが使用されている。徳島県が所有する球場を阿南市が管理するという方式で運営されている。




 6月には「野球のまち阿南推進協議会」を設立。市職員である田上さんらが中心になり、野球を生かした観光誘致、「スポーツツーリズム」へ本格的な取り組みを始めた。
181128正月特集06_050
 最初に手掛けたのは08年4月に開催した第1回西日本生涯還暦野球大会だった。広島、岡山など10県から20チームが参加し、市内に9チームある還暦野球連盟が主催を務めた。上田市の生涯大会に習い、あなんスタジアムをメーン会場に2日間で各チーム3試合のリーグ戦をこなす。チャンピオンを決めるというよりも、野球を通じて互いの交流を深めるのが最大の狙いだった。
 「大成功だった」と田上さん。最初は初めての試みに不満を漏らしていた地元の還暦野球の関係者も、入場行進をして晴れの舞台を経験し、その楽しさを理解できた。懇親会で酒を酌み交わせば、野球人同士、県外の人ともすぐに親しくなれる。これがきっかけで交流が続いている人もいるという。以後、毎年この大会を開催しており、県外から毎回やってくる「常連」が7チームある。現在は市内を中心に8会場32チームが出場する一大イベントに成長した。第1回大会の2日間で県外からやってきた宿泊客が約300人。ビジネス客やお遍路ぐらいしか訪れなかった阿南市に初めてできた「観光客」の実績だった。

・アイディアを次々と
181128正月特集04_050
 10年4月に市の産業部に正式に「野球のまち推進課」=写真=が発足した。初代課長は田上さん。還暦野球に始まり、少年野球、高校野球、社会人野球、独立リーグ、プロ野球とありとあらゆるジャンルで大会、合宿、交流試合など野球イベントを仕掛けていった。
 ユニークさが際立つのは「野球観光ツアー」である。「本格的な球場でプレーしてみませんか」をキャッチフレーズに、県外の草野球チームに1泊2日で2試合の対戦を組むツアーを呼び掛けた。参加費は1人1万3千円。対戦相手は地元の草野球チームだ。野球が盛んな阿南には一般から還暦、古希まで数多くのチームがあり、参加するチームが希望するレベルの相手とマッチメークする。
181128正月特集07_050
 電光掲示板に名前が出て本格的な場内アナウンスで呼んでもらえるので、プロ野球選手や甲子園球児になったような気分が味わえる。「ABO60」という60歳以上の女性のチアガールによる私設応援団がスタンドを盛り上げる。試合の後には歓迎会が組まれており、地元の保存会が徳島名物・阿波踊りを披露するサービスもある。
 11年3月の佐渡高校を皮切りに、その年のセンバツ甲子園に出場する北信越地区の代表校が、合宿するようになった。雪に閉ざされて野球の練習が満足にできない北信越地区の学校にとっては、甲子園から比較的近い場所でセンバツに向けたシミュレーションができる。練習試合の相手となる地元高校にとっては甲子園レベルの野球を実感できる絶好の機会だ。

 「野球のまち」をPRするポスターには、あなんスタジアムである野球イベントが掲載されている。この10年あまりの取り組みの成果もあって、1月から11月までほぼ球場は稼働している状態だ。あるのは球場という「ハード」だけ。残りは全て田上さんらが出したアイディアを「かたち」にしていったものである。
 「大事なのは市民が楽しみながら参加して支えるということ」と田上さん。球場のアナウンス、審判員、ABOの応援団、観戦ツアーの対戦相手…すべては阿南市民の自主的な参加で支えられている。センバツ出場校が合宿する際には地元の婦人会の人たちがおもてなしをする。その模様をメディアで取材してもらったこともあった。野球に関する話題はメディアも積極的に取り上げることが多い。おもてなしは、選手はもちろん、帯同する保護者にも好評で、その評判が翌年もやってくることにつながる。
 参加する市民が、やらされるのではなく、楽しみながら取り組めるから、やってくる人たちも「また来たい」と「リピーター」になってくれる。08年、約300人だった「観光客」は18年で約6000人になる見込み。10年間で20倍の観光客を呼び込む力になった。国内にとどまらず、モンゴル、中国天津といった海外との野球交流も始まっており、野球を通じたインバウンドの可能性をも広がりをみせている。
スポンサーサイト



テーマ:草野球 - ジャンル:スポーツ

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://spokago.blog68.fc2.com/tb.php/2887-55faf417
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック