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「野球のまち」を訪ねて・下(奄美新聞正月特集)
徳島県阿南市に学ぶ
「スポーツを生かした町おこし」とは?

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・官民一体で盛り上げる

 野球による交流人口の増加は町にどのような影響をもたらしたのだろうか。
 「水商売というのはこういうものなのかと実感しました」
 市内のホテルサンオーシャンの支配人・工藤亨さんは、野球のまちの取り組みが始まってからの変化を如実に感じている。生まれ故郷の阿南に戻ってきてホテル業に携わるようになって25年あまり。前述したようにホテル業界のターゲットはビジネス客。深刻なデフレとなっていた当時、業界はダンピングが相次ぎ、いかにサービスを減らしてでも、単価を安くするかの競争を続けていた。




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 「これは業界の在り方としておかしい」と工藤さん=写真=は感じていた。10数年前から野球による交流が始まり、野球の団体客が宿泊するようになった。これまでとの明らかな違いは「アルコールの消費量」だ。併設するレストランで宴会がある。他のどの団体よりも野球関係のアルコール消費量が圧倒的に多かった。水=アルコール消費量が、自分たちの業界の売り上げを大きく左右することを実感できた。

 18年11月には一般社団法人・国際野球観光交流協会が立ち上がった。これまで推進課が主体で取り組んできたが「官」だけの力には限界がある。市長の方針が変わればどうなるか不透明だし、田上さんも定年を過ぎている。この10年あまりの取り組みで着実に成果を挙げてきた「野球のまち」の流れを、民間でもサポートして官民一体で取り組める体制を作るための法人だ。
 サンオーシャンの四宮仁社長が代表、工藤さんら3人が理事を務め、地元の阿南信用金庫の呼びかけで、ホテル、飲食、建築、イベント会社など22社が参加して発足した。
 設立までの準備期間で工藤さんらが取り組んだのは「とにかく人に会うこと」だった。青森で開催された早起き野球の全国大会に田上さんと同行。100枚持っていった名刺が半分になるほど、人に会って挨拶して回った。
 「野球のつながりは半端ないですよ」と工藤さん。名刺を渡して「野球で観光客を呼び、町の活性化に取り組んでいる」という話を10人にすれば「3人は『どういうことですか?』と興味を持って真剣に食いついてくる」。そういう人とは次のアポイントが取りやすく、実際に阿南まで視察でやってきた人もいた。何より力を発揮するのは「世界で唯一、市役所の推進課がある」というインパクトだった。
 中国、台湾、香港、18年は野球で阿南を訪れるアジアからの観光客が増えた。韓国、アメリカなども興味を持っている人とのつながりができた。「そういった人たちが何を求めているのか。1つ1つの要望を確実にこなして、気がついたら右肩上がりで海外からのお客さんも増える」ようになることを理想に掲げている。野球を「手段」にして「阿南の町が国内外の観光客でにぎわい、若い人から年配の人まで、みんなが元気で活気のある町」にすることを目指す。
 高齢化、過疎化、人口減少…日本のあらゆる地方都市が抱える問題は阿南にもある。だが工藤さんは「目標をもって前向きに取り組んでいたら、そんなの気にならなくなりました」と笑う。「野球のまち」の取り組みに協力していく中で、野球の魅力、人に会う面白さ、眠っていた町の可能性、様々なものを再発見できた。問題意識よりも、1つ1つ目の前の課題をクリアして世界が広がっていくことの「面白さ」が活動の原動力になっている。

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・「プロ野球」より「草野球」

 プロ野球(NPB)の公式戦を開催すれば3万人の集客が見込めるかもしれない。しかしフランチャイズ制が確立しているNPBは、本拠地での興業が優先され、本拠地外での開催は年間で全体の3%以下しかない。仮に阿南に誘致したとしても年間1試合が限度だろう。
 仮にその1試合で3万人の観光客が阿南にやって来ても、市内のホテルの稼働数は約600。とてもさばき切れない。いくばくかの経済効果があったとしてもそれは一過性のものにすぎない。
 「ならば600室が毎週末一杯になるにはどうしたらいいか?」(田上さん)を考えて、たどり着いたのが「草野球の聖地」を目指す発想だ。
 この発想を応用すれば、奄美でも地に足のついたスポーツツーリズムが可能ではないか? 奄美と沖縄で軟式野球の頂点を争う「オリオンスーパーベースボール」は、まさに草野球を通じた奄美と沖縄の交流の実績である。野球でなくてもいい。サッカー、バスケットボール、バレーボール、陸上…地域の実情に合ったスポーツを何か切り口にして、官民一体となってアイディアを出し、人と人の交流を実践していく。奄美を「スポーツアイランド」にするとはまさにこういう取り組みではないだろうか。

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 今回の取材の締めくくりに、道の駅に併設された「89番 野球寺」=写真=を訪れた。88カ所ある四国霊場の89番目という意味や「89(や・きゅう)」の語呂合わせである。
モニュメントの背景に絵が描かれている。あなんスタジアムのバックネット裏席を老若男女、町の人たちが埋め尽くし、観戦を楽しんでいる。後ろではABOのおばちゃんや阿波踊りのメンバーが踊っている。どの顔も笑顔で幸福感にあふれている。田上さんや工藤さんたちが目指す「理想」がそこに描かれているような気がした。

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テーマ:草野球 - ジャンル:スポーツ

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