FC2ブログ
NPO法人スポーツかごしま新聞社オフィシャルサイト

ギャラリーショッピング
風をつかまえた少女―第7章
「野望」の芽生え―南九州大会女子百メートル
20040820084944.jpg

 インターハイ出場のための最終予選となる南九州地区予選大会は、6月17―20日の4日間、宮崎市の宮崎県総合運動公園陸上競技場であった。
 宮崎、熊本、沖縄、そして鹿児島、各県予選を勝ち抜いた選手が、8月に島根県であるインターハイに出場を目指して最後の関門に挑む。会場となった宮崎県総合運動公園は、宮崎市の郊外にある。近くには青島海岸があって、ワシントンパームの並木が南国情緒を感じさせる。

 上村真弓にとっては、初の県以上クラスの大会出場になる。大会前日の16日に宮崎入り。2日目に百メートルの予選、準決勝、決勝があり、3日目が二百メートルの予選と準決勝、勝ち残ることができれば最終日の二百決勝、以上が真弓の競技日程である。 百、二百とも出場選手はそれぞれ24人。予選タイムのランキングでは、百の13秒01が13位、二百の26秒43は10位だった。インターハイ出場を勝ち取るためには、それぞれの種目で6位以内に入らなければならない。


※2004年に「スポーツかごんま」で連載した「風をつかまえた少女」をリメイクしてお届けします。


 「県総体の時よりもプレッシャーがかかっていないのか、あんまり緊張していません。ちょっとは緊張していた方が、本番では集中できるんですが、今度は逆に本番直前で急激に緊張するのではないかとちょっと心配ですね」。

 本番前日の心境である。
 県総体から南九州まで2週間あまりの調整期間は、レベルアップよりも、調子を落とさずに自分の力を引き出すことに重点を置いた。2週間で100の実力を150にするのではなく、持っているものを100パーセント引き出す工夫をすることで、更に上のステップを目指す。調整期間の間は負荷をかける練習よりも「もう一本走りたいという気持ちを我慢して、気持ちよくあがる」(太田敬介コーチ)程度のメニューが中心だった。
 予選ランキングでも分かるように、百、二百ともインターハイ出場のためには、もうワンランク上の実力が求められる。厳しい戦いになることは間違いないが、県記録会、県総体と走れば走るごとに真弓はベスト記録を更新している。この上り調子を維持できれば、南九州突破も決して夢物語ではない。何が何でもインターハイ出場と入れ込んで闘志満面といった感じはないが、未知の世界だからこそ、むしろリラックスして、自分の力を思う存分発揮しようといい意味で開き直っているような雰囲気を感じた。

 女子百メートルのあった大会2日目は、台風6号の接近で風雨に見舞われた4日間の中で唯一晴天に恵まれた日だった。
 真弓のテーマは「いつも通りの走りをすること」。前日は緊張感のなさを心配していたが、朝からは「いつも通り緊張していました」(真弓)。予選は午前10時20分スタートで、第1組の第5レーン。出走確認を終えて控え所のテントで、各県の予選を突破した「つわもの」たちと初めて顔を合わせた。

 「すごい速い人たちなんだろうなってオーラを感じました」。

 控え所のテントでは、それぞれの座る位置は決まっていた。ちょうど真弓の場所は、日影の涼しいところだったが、いつのまにか別の選手に取られていた。ささいなことだが、すでに「戦い」が始まっていた。

 太田から伝授されたポイントをもとに真弓は百のレースを次のように頭に描いていた。
スタートダッシュから最初の30メートルは急激な加速区間。車でいえばアクセルをぐっとふかして、ギアをローからセカンドにシフトするイメージだ。自転車ならペダルを一気にこいで加速していく感覚である。3-70メートルまではゆるやかな加速区間。ここまででトップスピードを作ると、70メートル付近で2、3歩リラックスする。力を抜くのではなく、ギアをニュートラルにするような感じでいったん緊張を解き、残り30メートルでもうひと踏ん張りするための力を蓄える。特に最後の5メートル付近では一歩でも早くゴールしようと力んでしまうのだが、それだとフォームが崩れてしまってかえってタイムをロスする。最後の最後まで冷静に自分のレースを組み立てたものが、勝者に近づく。
 予選では、ガチガチに緊張していて、レースを組み立てるどころか「気がついたらいつのまにかゴールしていました」(真弓)。それでもタイムは12秒97で、初めての12秒台をマークし、準決勝に進んだ。1本走って余裕ができたので、準決勝では、太田から言われたことを少しでも意識しながら走ることに集中した。加速から70メートルまででトップスピード作り、リラックス、そして最終加速…「リラックスはできたんですが、周りが速かったんで最後は追いつけなかったですね」。準決勝第2組の5位で決勝進出の8人に残れなかったが、タイムは12秒84と更に自己ベストを塗り替えた。

 「後悔はしていません。記録がかなり伸びたのでうれしかったです。あとちょっとで決勝に残れなかった悔しさを二百につなげられると思いました」。

 残るチャンスは二百のみ。口には出さなかったが、本気で全国を目指す「野望」のようなものが、芽生え始めていた。


※次回更新は10月26日(月)です。
スポンサーサイト



テーマ:陸上競技 - ジャンル:スポーツ

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://spokago.blog68.fc2.com/tb.php/327-7709e31d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック