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ベースボールコラム「球道夢限」第10回
信じて送り出すこと
【2回戦・宮崎工―鹿児島実】6回表宮崎工一死一三塁、四番・伊比井が左越え二塁打を放ち、4―1とし、塁上でガッツポーズ=宮崎・アイビースタジアム
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 日帰りで宮崎まで秋の九州高校野球を観に行った。さきの鹿児島大会で優勝した鹿児島実と宮崎工との一戦をじっくり観戦した。鹿実にとっては来春のセンバツ甲子園への大きなチャレンジの第一歩だったが、投打の歯車がまったくかみ合わず、1―5で敗れた。いろんな敗因が考えられるが、私はバッテリーの力量と、監督が選手を信じて送り出していたかどうかの差がこの結果になったとみる。

 象徴的なのは五回裏のシーンだ。スコアは1―2。序盤はバッテリーの独り相撲で先制点を許し、リズムに中々乗れなかったが四回裏に四番・用皆峻のソロでようやく反撃の口火を切った。五回表は相手の機動力にかき回され一死満塁と再びピンチを背負ったが、リリーフした一年生左腕・野田昇吾が踏ん張って連続三振で切り抜けて、中盤の流れは間違いなく鹿実にきていた。
 案の定、五回裏は振り逃げに暴投、送りバントで一死三塁と絶好の同点機を迎えた。宮下正一監督は九番・安岡祥平にカウント2―1からスクイズを命じる。結果は低めのボールを当てることができず三振、飛び出した三走も憤死。最高の盛り上がりの場面が、最悪の併殺で流れを完全に失った。

 「スクイズ」という作戦を批判するつもりはない。ただ試合後、宮下監督のコメントの中に「うちの打線ではこの投手から打てない」というのが気になった。なるほど、相手の左腕・浜田智博はボールの伸びも、変化球の切れもあり、簡単に点の取れない投手であることは分かる。しかし、指揮官が選手を「打てない」とどこかで決め付けて送り出すのはいかがなものだろうか? その疑問を久保克之総監督にもぶつけてみた。「あなたはそういうかもしれないけど、あの打者では打てないんだよ。(監督が)私でもスクイズだった。ただ、(スクイズを)仕掛けるカウントは考えたけどね」。

 「選手はあの場で結果を残すために毎日バットを振っている。ならばその努力を信じて打たせたい」
 以前、神村学園の長澤宏行・元監督や鹿児島工の中迫俊明監督が同じようなニュアンスの話をしていたことが私の頭にはある。打たせるにせよ、スクイズにせよ、詰まるところは結果論である。決まれば「名采配」だし、失敗すれば敗因につながる。私が言いたいのは、どんな作戦を選択するにせよ「選手を信じて送り出す」かどうかということだ。
 38年ぶりの九州大会という宮崎工はバッテリーを中心によくまとまっていて、力強さを感じた。思い切りのいい打撃、足を生かした機動力、何より勇気を持って内角を強気で攻めたバッテリー…選手個々の能力に差があるようには思えなかったが、現時点でのチーム力は明らかに鹿実より上だった。
 浜田―伊比井悠嗣は1年秋からのレギュラーバッテリー。「バッテリーのことは2人に任せていますから」という岩切隆公監督の言葉には選手に対する信頼感がうかがえた。攻守に大活躍だった四番・伊比井は「勝てると思っていました」と胸を張る。その根拠のひとつに、監督の「信頼」があるように思えてならない。

◇2回戦①(アイビースタジアム)
宮崎工  101 002 010=5
鹿児島実 000 100 000=1
(宮)浜田―伊比井
(鹿)用皆、野田―関山
・本塁打 用皆(鹿)
・二塁打 伊比井(宮)揚村(鹿) ・試合時間 2時間8分
・球審 斉藤 ・塁審 ①高柳 ②座喜味 ③国仲
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テーマ:高校野球 - ジャンル:スポーツ

コメント
この記事へのコメント
”打たせるにせよ、スクイズにせよ、詰まるところは結果論である。決まれば「名采配」だし、失敗すれば敗因につながる”小生も全く同感です.”私が言いたいのは、どんな作戦を選択するにせよ「選手を信じて送り出す」かどうかということだ”それも同感です.しかし”指揮官が選手を「打てない」とどこかで決め付けて送り出すのはいかがなものだろうか”この文言を選手を信じていないと取るか,冷静に分析していると取るかは微妙な違いと思います.小生は宮下監督は後者だと思います.貴君の文面だけみると好機には押せ押せで強気に行けと取れるような気がします.スリーバントスクイズが決まっていれば好采配だし,それにより流れがかわり勝利に導けたと思います.久保総監督の言うとおり”あなたはそう言うかもしれない”その言葉に小生も同感です.勝負はほんのちょっとしたアヤでどちらにも転がります.力の似通ったチームでは紙一重の駆け引きが続きます.ほんのちょっとしたことでゲームを落とします.一番,落ち込んでいるのは宮下監督と思います.
2009/10/26(月) 20:11:35 | URL | 野球狂の歌 #-[ 編集]
貴重なご意見、ありがとうございます
 野球狂の歌様、貴重なご意見ありがとうございます。
 このような意見を寄せていただけることが何よりうれしいです。一番落ち込んでいるのが監督さんであると私も思います。

 この記事の中で一番伝えたいのは、どんな気持ちがあるにせよ、取材している私に「打てない」と決め付けているようにとられたり、南日本新聞の記事にあったようにスクイズを決められなかった選手が悪いととられかねないような発言をしているところに、私は問題があると思うのです。
 深読みすれば、あえてメディアを通じて名指しで厳しく指摘することで、選手に発奮を促すということだとも思いましたが、やはり公になるコメントで敗因を選手に押し付けるような話を監督がするべきではないと私は考えます。

 ご指摘の通り、勝負の趨勢は「ちょっとしたこと」で決まります。あのスクイズの場面に限って言えば、本当に信頼して送り出し、気迫を込めて打席に立っていれば、内野ゴロで生還、犠牲フライ、あるいは投手が力んで暴投ということさえあったと思うのです。自分で決めなくても「次につなぐ」気持ちがあれば、仮に三振でも、もう1回次の打者で勝負ができる。そんなことを考えてゲームを見ていたのに結果は最悪の併殺でした。
 確かNHK旗の決勝だったと思うのですが、監督さんはスクイズも考えられた場面で、強行して失敗した際に「スクイズして失敗したリスクの方がこわかった」と話していたことも頭にありました。おそらくはその裏返しが今回なのでしょうが、私はこの場面こそ思い切った勝負を仕掛けるべきだったと思います。

 いろいろ書きましたが、私が表現できるのは基本的に「結果論」でしかありません。いろんな「推論」はできますが、限界もあります。また、このような立場でこのような意見をいうのが我々メディアの仕事だと思うのです。時には厳しい意見になることもあるでしょう。しかし、受け取り方がどうであれ、私がこのような記事を書くときは、それが書かれた人に何らかの益になるという確信があるときです。
 まだまだ私自身も未熟で勉強しなければならないこともたくさんあります。今後ともいろいろなご意見、ご感想をお寄せください。
2009/10/27(火) 04:06:58 | URL | 政純一郎 #hiiZJbic[ 編集]
小生も現地で見ておりました。
宮工はのびのび戦っていたと思います。
隙あらば走る、ボールに喰らいつく打撃、
粘って四球、勝利に対する執念を感じました。流れは完全に相手に来ておりました。こういう相手には思い切った作戦で一気に
流れを変えることが肝要と思います。
積極的に行った失敗は良いと思います。
2009/10/27(火) 20:11:38 | URL | 大隅隼人 #-[ 編集]
はじめまして

鹿児島のスポーツについて語っていきましょう。
2009/10/27(火) 20:33:22 | URL | 薩摩軍 #-[ 編集]
 小生は南日本新聞の記事は存じ上げませんが,監督が名指しで選手を批判しているのであればあってはならないことだと思います.真意はよくわかりませんが,勝ちは選手のおかげ,負けは監督の責任というスタイルは大事かと思います.小生は野球は確率論と思ってます.采配に関しては,その打者の時にどのような方法で得点するかを日頃からどういう風に想定していたかが重要と思います.小生はその打者が打てないという発言は必ずしもその打者を信用していないということにはならないと思いますよ.もし実際そうであれば政さんの言うように選手と監督の信頼関係はなく,そのチームは勝てないと思います.おそらく監督さんや総監督の言葉は相手投手との力関係,その時のお互いの調子をみての発言だったと思います.九州大会に出てくるような好投手をいくら鹿実とはいえ九番バッターがバコバコ打つというのは難しくはないでしょうか?政さんの意見も十分理解できるし,別の考えもあると思います.小生の意見はあくまで一般論です.
2009/10/28(水) 04:58:34 | URL | 野球狂の歌 #-[ 編集]
ご意見、ご感想ありがとうございます!
大隅隼人様、薩摩軍様、コメントありがとうございます。このようにいろんな意見が飛び交うことが鹿児島の高校野球の、スポーツの、そしていずれは鹿児島全体の発展につながると思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。
2009/10/28(水) 05:28:31 | URL | 政純一郎 #hiiZJbic[ 編集]
なるほど!
 野球狂の歌様、重ね重ね、貴重なご意見ありがとうございます。
 ちなみに南日本新聞に出ていた監督さんのコメントは
 「4番じゃないから打てないのはいい。でも、あそこで(スクイズを)決めるのが役目だ」
 です。解釈はいろいろできますが、監督さん、総監督さんの真意はご指摘の通りであって欲しいと思います。
 あの場面、打たせるのも、スクイズも、両方考えられましたが、試合の流れ、あの場の雰囲気などをライブで見ていて、私が監督なら「お前を信じて任せる。責任は俺が取る」だったし、スクイズならセーフティーを仕掛けた方がより得点になる確率は高かったと思っているに過ぎません。
 いずれにしてもこのような意見を交わせるのはいいですね。今後ともよろしくお願いします!
2009/10/28(水) 05:55:13 | URL | 政純一郎 #hiiZJbic[ 編集]
長文、失礼します。
よく拝見させていただいております。

今回の記事に関して、失礼ですが、憤りを感じましたのでコメントさせていただきました。
私はこの試合を見ていないのですが、采配ミスかどうかという記事は、きちんと根拠のある記事であればいいのですが、この記事は根拠がないので、気持ちのいいものではありません。
私自身も監督をしているので、采配に関して書くのであれば、”信頼”だけで物事を考えて批判をすることはどうかと思います。

スクイズの場面に関してですが、

・打者は左投手に対して得意・不得意どちらだったのでしょうか?
・打者の最近の調子はどうだったのですか?
・前の打席での傾向はどうだったのですか?
・バントは得意・不得意な打者だったのですか?
・相手投手は中盤、力は衰えてきていたのですか?中盤に入り、鹿実打線は捕え始めていたのですか?
・この打者には無理だと思ったのならばなぜ監督は代打という考えはなかったのですか?

それらの事を考えての書かれたのですか?

左投手に対して得意だったり、好調だったなどの要因があれば、打たせるべきだったと思います。
雰囲気だけで監督は采配はしません。
様々な状況を考えて、判断・決断をします。

鹿実は、9番打者だから、打てなくてもきちんと決めて欲しい、あそこでスクイズを決めるのが役目だと考えていた時点で負けていたと私も思います。
でも、それは監督の気持ちの問題でなく、その時点で攻撃の選択肢がスクイズしかなかったからなのではないでしょうか。
(私は、久保監督の「仕掛けるカウントを考えた」は、点をもっと取りやすくするために打者がバントしやすい状況を作らせるという意味だと思います。
つまり、その打者で勝負を成功させる1番高い確率がスクイズであり、そこにもっと成功しやすいように打者にスクイズしやすい有利なカウントを作らせるということを考えたんだと私は思っています。)

もし、そうであったのならば、”信頼感”でなく、勝負できる駒がなかったというチーム実力の問題なのではないでしょうか?
秋の大会ですし、信頼できるまでにチームは仕上がっていなかったのかもしれません。戦いながら信頼を作っているのかもしれません。

でも、采配は、自分達の能力や相手の能力を考え、成功率の高いものを選びます。
精神的なものや気分でやっている訳ではありません。その程度で采配に関して書かれることは安易すぎますし、それがメディアの仕事になってもらっては、一生、采配そのものは解き明かすなんてできないでしょう。

監督さんの言葉にはその場の要因から考えたことがたくさん詰まっています。それをきちんと読み取ってもらいたいと思います。
采配に関して書かれるのであるならば、なぜ、監督さんはその采配をしたのかをもっと考えた上で書いてください。

厳しいことを言いますが、正直、この記事は何の力にもならないと思います。
こういう考えで監督の采配を行われていると思われたら、腹が立ちますし、采配経験のない人間が何を言っているんだ?と怒鳴りたくなります。
2009/10/31(土) 23:33:26 | URL | 匿名 #-[ 編集]
Re: 長文、失礼します。
匿名様
 貴重なご指摘、感謝します。現場で采配を振るう方がそう思われるのは最もだと思います。

 私がどうしてこのような記事を書いたのか、思うことを書かせていただきます。
試合をじっくり観戦し、試合後のいろんなコメントや、取材現場の雰囲気、監督さんの言葉使いや表情、そして私個人の想い…いろんな要素を考慮してあの記事になりました。私自身、取材力や表現に未熟なところがあるのも認めます。書いていいのかどうかも迷いました。このような賛否両論の批判が寄せられるのも予想はできました。
 それでもあえて書いたのは、記事では触れませんでしたが、監督さんが「鹿児島の代表として恥ずかしい試合をしてしまった」おっしゃったからです。いろんな発する言葉や雰囲気の中に「本当に選手を信頼しているのか?」という疑問を感じたからです。これが深い問題であるし、我々のような指導の現場を知らないものが、そこまで踏み込んでいいものか、答えは見つかりませんでしたが、「鹿児島の代表として恥ずかしい」という思いがあるなら、このような記者の指摘を受けることが、いつか鹿実のため、監督さんのためになると思って記事にしました。
 いろいろと細かい話を書きたいとも思いますが、書けば書くほど誤解を招くこともあるかと思いますので、もし何かあられるなら直接メール(fjfjr840@ybb.ne.jp)をいただければ幸いです。ご迷惑でなければ、その際には貴方のお名前もお伺いしたいです。

 いずれにしてもこのような指摘は大いに歓迎します。そういうやり取りを重ねることで、誤解や間違いの修正があり、理解が深まり、この記事を書いたことが「何かの力」になると思っています。
2009/11/01(日) 06:47:12 | URL | 政純一郎 #-[ 編集]
 匿名の方のご意見も一理あると思います.政さんの記事も確かに2-1までになった過程がよくわからないのでピンポイントでその場面だけを取り上げて采配ミスとするのは如何なものかと感じるところもあります.小生も監督をしておりますので匿名様のご意見にも共感するところも大ですし.一方,ジャーナリストとしての政さんの立場もよくわかるつもりです.小生が感じるのは采配ミスという言葉の定義です.采配を選択した段階で問題あればミスかもしれませんが,采配を選択した段階で選択枝の一つであったとすれば,失敗したという結果で采配ミスといわれるのは辛いところがあります.以前も申しましたし,匿名様の意見にもありますが野球は確率のスポーツと思いますので,鹿実監督様の選ばれた作戦が,苦し紛れだったのか,ある程度想定したことだったのか,またスリーバントスクイズをやったことがあるのか,もしくは練習などで行っていたのかがわからないと采配ミスかどうかは論じられないような気がします.結果でとらえれば確かに采配ミスと言えるかもしれませんが,小生は采配失敗と言った方が良いのかなと思います.監督の立場としては結果から逆算して選択した采配を問われるのは辛いところもあり采配ミスという指摘には反論したいと思う時も正直あります(心の中でおまえがどれくらいわかっとるんかいと叫んだり).匿名様も采配が裏目に出たら監督の責任と思っておられると思います.ただ政さんの記事も全くの根拠なしで書かれているものではないことは匿名様もわかっておられると思いますよ.ただペンの力は強いですからしっかり信念を持ってこれからも頑張ってください.
2009/11/02(月) 09:04:05 | URL | 野球狂の歌 #-[ 編集]
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