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風をつかまえた少女―第8章―
「追い風」の予感―南九州大会女子二百準決勝
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 二百の予選、準決勝を走った大会3日目は、上村真弓のインターハイ最大のクライマックスだった。
 予選は26秒28と自己ベスト記録を更新し、予選第3組の2位で準決勝に進んだが、「下半身に疲労感が残って、四百を走った後のようなだるさを感じました」。


※2004年に「スポーツかごんま」で連載した「風をつかまえた少女」をリメイクしてお届けします。


 リレーがない分、走る本数は県総体よりも少ない。だが、この大会はインターハイをかけて、このレースに全てをかけるために南九州各県からやってきた精鋭たちの戦いで、競技のレベルも、精神的なプレッシャーも県とは段違いである。準決勝は2組あって、真弓は第2組の第5レーン。内側から追いかけるのでも、外側で追いかけられるのでもない、最高のポジションをとったが、「足が上がらなくて、スーっと前に出て走るような感覚をつかめませんでした」。コーナーから直線にかけてはスピードに乗って前に出られたが、後半は周りから追い上げてくる選手のプレッシャーに耐えられず、走りを崩した。ちょうど県総体の決勝と感じが似ていた。
 結果は26秒42で第2組の4位。決勝に進めるのは各組の3位までと4位以下タイムで上位2人までである。もし、第1組の4、5位が26秒42よりいいタイムだったら真弓の高校陸上はここで終わる。

 競技場には電光掲示板がないから、記録の速報は場内アナウンスのみが頼りである。走り終えた後、真弓は付き添いの井上由梨佳とお互いの両肩をがっちり握って、固唾を飲んでアナウンスを聞き入っていた。

 「決勝進出者、プラス2名をお知らせします」。

 「カンムラ マユミ」の名前はその一番最初に読み上げられた。首の皮一枚で決勝に望みをつなぎ、ホッと表情をゆるめて真弓は由梨佳の胸に顔をうずめた。

 「トーナメント6、7試合を勝ち抜くためには、どこかで必ず『相手十分の試合』がある。優勝するためには、どうしてもそんな試合を勝たなければならない」。

 ある高校野球の監督に聞いたことがある。実力差のある相手なら、自分たちのペースで楽に試合を進めることは容易だろう。だが、勝ち進むにつれて実力差は縮まってくる。こちらがベストな状態で臨んでも、相手のペースで試合をしてしまう苦しい展開がどこかである。1998年の夏の甲子園で、優勝した横浜(神奈川)がPL学園(大阪)や明徳義塾(高知)と死闘を繰り広げたことを例に挙げれば分かりやすい。
 それは時として「運」と呼ばれるものかもしれない。だが「運」をつかまえるのも、飽くなき勝利への執念をもやし、最後まで努力を怠らなかったもののみに授けられる。それをいかにしてものにするのか、頂点を狙うものの使命である。

 競技は違うが、陸上も県、南九州の中で、それぞれ予選、準決勝、決勝とサバイバルレースを勝ち抜くのはトーナメント戦と似ている。真弓にとっての南九州二百の準決勝は、まさに「相手十分」の苦しいレースだった。その中で、かろうじて決勝進出8人の枠に残った。大きな追い風が、真弓に吹いていた。


※次回更新は11月2日(月)です。
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テーマ:陸上競技 - ジャンル:スポーツ

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