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万里一空~新たな空を見上げて・第1回
「跳びたい!」
竹元咲(鹿児島高陸上部)

200519万里一空01
 史上初となるインターハイ(IH)中止が4月の段階で決まり、6月延期で開催予定だった鹿児島県高校総体も中止となった。集大成の場を失った高校生アスリートやチーム、指導者は今何を考え、どんな思いで日々の活動に取り組んでいるのか?
 5月19日、鹿児島高陸上部を訪ねた。

 「身体の中にポッカリ穴が開いた感じ。大切な人を亡くした喪失感でしょうかねぇ~」

 中江寿孝監督は正直な心境を語った。

 元々、中江監督は鹿児島ジュニアという小中学生の陸上クラブの指導者で、鹿児島高陸上部監督に就任して今年で12年目になる。「走る、跳ぶ、投げる、陸上競技を好きになってもらって、長く陸上を続ける選手」を育てることを大きな目標に掲げる。





 インターハイがなくても、彼らから陸上する機会が奪われたわけではない。理屈は分かっている。部員は陸上部が75人、今年から独立した駅伝部43人と合わせて118人で、九州最多、全国でも10指に入る大所帯だ。県総体中止の発表があった後も、明るい雰囲気で練習はできているが、1人1人の心境は複雑だろう。

 「県総体の4日間は独特な雰囲気があるんですよ」

 例年なら5月末から6月初旬、今年は本来なら5月22日から県総体が始まる予定だった。本当なら残り1週間を切って最初のピークを持ってくる調整の頃だ。校内の他の部の生徒もそれぞれの「集大成」を迎えて一喜一憂する空気の中で、学校生活がある。

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 陸上の場合は県総体を経て、IH最終予選となる南九州大会が6月中旬にあり、7月上旬の県選手権を経て、7月末から8月初旬にかけての全国大会がある。「暑く、熱い」この間の独特の空気感を今年味わえないのは正直寂しいものがある。

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 3年生の竹元咲は走幅跳で昨年のIH6位入賞。157cmと小柄だが、スピードとバネがあり、小ささを感じさせないダイナミックな跳躍が持ち味だ。昨年のIHでは追い風参考ながら5m93を跳んでおり、2年生世代ではトップの成績だった。

 冬季練習の頃は腰を痛めていたことなどもあって、満足な追い込みができていなかった。3月、ようやく走れるようになった頃、学校休校、部活もできない時期があった。「練習の雰囲気が最悪。声も出ていない。みんなバラバラになったような感じだった」こともあった。

 何度かミーティングを重ね、1人1人が本音をぶつけるようになってから、チームの雰囲気は良くなった。だが4月に早々とインターハイ中止の発表がある。

 「咲と一緒に日本一を目指したかった」

 中江監督に言われて初めて目指していたものがなくなる現実を突きつけられた。

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 それまでケガで満足に練習ができず、部内がうまくまとまらないことの方が気になっていたが、当たり前にあると思っていた「挑む場」もなくなった。「陸上も、幅跳も、主将も全部やめたい!」。そんな本音を中江監督にぶつけたこともあった。

 5月8日、KKB鹿児島放送の企画で、バレーボール元五輪選手の迫田さおりさんと対談する機会があった。

 「結果は後からついてくるから、今は思う存分楽しんで」

 五輪選手の言葉が胸に響いた。インターハイはない。だがまだ「国体がある」。大学に進んで陸上を続けるためにも、今を頑張りたい気持ちになれた。

 公認のベスト記録は5m83。「実はまだ中学時代の記録を更新していない」。高尾野中3年の全国中学総体で出した記録が高校では塗り替えられていない。昨年は故障続きで、ごまかしながらの大会出場が続いた。

 これまでは「ただ感覚で跳んでいた」が「身体の使い方などを意識しながら」競技するようになった。この4月から同校OBで男子十種の県記録を持つ小倉希望コーチが指導するようになって、より細かく動きや筋肉、骨盤の使い方などを意識するよう心掛けている。

 「ピットに立った時、観客席から『いっぽーん』と声をかけてもらうのがたまりません」

 幅跳をしていて一番の快感を覚える瞬間だ。中3の全中のときにそれを初めて感じた。仲間や応援してくれる人の気持ちがグッと自分に寄せられるのを感じる瞬間がたまらない。

 だが小4で幅跳を始めて以来、自分のすべてが満足できたパフォーマンスは「一度もない」という。助走、踏切、跳躍、着地…それぞれに細かい技術があり、その全てがはまった瞬間に、ほんの一瞬空を飛んでいるような快感が得られ、ビッグジャンプが生まれる。

 「あるとすれば、高2の国体合宿でしょうか」

 国体合宿の練習で1本、着地に失敗したが、それ以外はほぼパーフェクトに近い感覚で跳べたのを覚えている。

 「跳びたい!」

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 今の素直な心境だ。大会でも、練習でも、何でもいい。約30mの助走距離をしっかりとって、しっかり走って、しっかり1本跳ぶ。そこから次の何かが見えてくるのかもしれない。

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テーマ:陸上競技 - ジャンル:スポーツ

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