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アスリート列伝「万里一空」第4回・塗木ひかる
鹿大で本気の陸上をやる意味
「陸上を続けていて良かった」
塗木ひかるの場合

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 国立大学の陸上部で本気の陸上をやる意味とは何だろうか? 高校で実績を残した選手が目指すのは、短距離も長距離も関東の私立大がメーンとなる。箱根駅伝の人気が著しい長距離は特にその傾向が強い。関西、中部、福岡などの大都市圏の他地域の大学は、「プロ」の指導者がいて、練習環境も充実している。近年躍進著しい福岡大はその典型だ。
 「国立大、それも地方の大学の競技レベルの低下が著しい」と鹿児島大陸上部の塗木淳夫監督は言う。それでも「鹿大だからできること」に注力し、短距離でも、長距離でも、あわよくば全国を虎視眈々と狙う気持ちで真剣に陸上に向き合う。

 「陸上を続けていて良かった」

 21年7月の鹿児島県陸上選手権女子百で優勝した塗木ひかる=写真=は言う。長い歴史のある県選手権で鹿大の選手が女子百を制したのは初めてだった。加えてタイムが11秒98と初めて11秒台の記録を出した。鹿大の歴代選手の中でも11秒台は初だった。甲南高時代、新人戦の優勝はあるものの、3年の南九州は予選落ち。関東の強豪大からは「お呼びもかからなかった」レベルだったが、大学で陸上の面白さに目覚め、昨年は全日本インカレに出場し、今季はグランプリなど全国クラスのレースに出場できるほどレベルアップした。大学での最大の目標は「日本選手権出場」と燃えている。





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 塗木監督の長女で、父、母・真由美さんと同じ鹿大教育学部体育科の4年生。ちなみに2つ下の妹・さくらも今春3年生として鹿大に編入し、陸上部に入った。「部屋で筋トレしながらお互いの筋肉を見せ合って喜ぶ」(淳夫監督)ほど仲が良い。幼い頃から「陸上」が身近にある環境で育った。
 大学入学までに1年の浪人経験がある。浪人中も淳夫監督の指導の下、練習だけは続けていた。大学で競技を続ける上で1年のブランクはハンディーのようにも思えるが、塗木は「浪人時代があったから、大学で伸びたのかも」と言う。練習は続けていたが、試合は地方の小さな記録会に何度か出たことがあるだけで、本格的なレースを経験していなかった。「高校以来、1年以上大きなレースに出ていなかったので、陸上に対する熱意が高まりました」(笑)。むしろ「浪人していなかったら大学で陸上はしていなかったかも」とも。高校時代、南九州で予選落ちして全国の壁の厚さを思い知らされた分「もうこれ以上伸びないかも」と思っていた時期もあった。
 入学して最初の年の九州選手権のレースで12秒22と自己ベストを更新できたのも大きかった。高校時代のベストは2年次の12秒62。1年以上のブランクがあるにもかかわらず、0.4秒ベストを更新できたことが自信になり、大学でも本気で競技を続けるモチベーションになった。

 高校時代、インターハイなどで実績を残し、活躍が期待されていながら「大学で伸びない選手も大勢いる」(淳夫監督)。高校時代が華やかすぎたゆえの燃え尽き症候群、強豪校で厳しい監督の下で言われるままに練習をしていた分、自分で走るモチベーションが作れない…様々な理由が考えられるが「身体もできてきて、考え方もしっかりしてくる10代後半から20代前半の時期に記録が伸びないのはもったいない」。
 伸ばすためのカギは「自己管理」と「コミュニケーション能力」にある。実績のない、受験して入ってくる選手が大半の国立大陸上部が、全国クラスの選手と戦えるカギがそこにあると淳夫監督は考えている。
 監督や周りから与えられる目標ではなく、自分の中に「こうなりたい」と思える明確な目標を持つ。そのために必要なことを自分で選択してやる。自己管理能力が備わっている選手は強い。淳夫監督、短距離ブロックの内田大介コーチ、トレーナー…ありがたいことに経験や知識の豊富なコーチングスタッフはそろっている。今の自分の状態がどうであり、何が長所で、どこが改善点なのか、意見を求められれば的確にアドバイスがもらえる態勢はできている。そこで役に立つのがコミュニケーション能力だ。
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 塗木を筆頭に加治木高出身で高校時代は四百の県覇者だった嶋児天音、男子短距離の原口大生(甲南高)…その2つの能力が備われば、今の鹿大の選手でも十分全国を狙える力を秘めていると淳夫監督は感じている。
 「監督やコーチ、トレーナーさんとは密に連絡をとるようにしています」と塗木。高校時代は言われるままにやっていた補強や身体のケアの大切さが、今は何のためにそれをやるか、意味を分かって取り組めるようになった。

 大学2年はコロナの影響で様々な活動が制限された分、記録が思うように伸びなかったが、3年では一気に花開き、前述したように21年の県選手権では11秒98と初の11秒台を出した。「いつか出ると思っていたのが、やっと出てホッとしました」。9月の全日本インカレは準決勝進出。同い年で全国を制した兒玉芽生(福岡大)らトップクラスにはまだまだかなわないが、「国立大の選手の中では一番だった」(淳夫監督)。
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 昨季11秒台が出たことで今季は織田記念、水戸招待などトップクラスの選手が出場するグランプリレースにも出られるようになった。トップクラスの選手との差を肌で体感した中で今自分の中に見えてきた課題は「二次加速を強化すること」だ。
 スタートダッシュ(SD)は元々得意だった。SDから30m付近までの1次加速はそれなりに自信を持っていたが、30-50mの2次加速でトップの選手にはグッと離されてしまう。そこをどう改善していくかが、今の練習やトレーニングのテーマである。

 今4年生だが、「大学院まで進んで日本選手権に出たい」という大学での最終目標が明確に見えてきた。「院まで含めた6年間で競技に取り組めるのもうちのメリット」と淳夫監督。日本選手権に出場するためには11秒8前後の標準記録をクリアしつつ、出場を確実にするための実績を残さなければならない。
 取材に訪れた6月20日の練習では100mの加速走をしていた。110mHのラインからスタートして10m加速した時点から100mのタイムを計る。手動で10秒8のタイムが出た。これまで加速走の練習で10秒台を出したことはなかった。「このタイムにプラス0.8秒が100mのタイム」と淳夫監督。計測係が音でストップウオッチをスタートしたため、プラス0.3秒することとなったが、単純計算すれば11秒9で走る力がついていることになる。
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 そんなコミュニケーションを監督と選手、時には父と娘の間で日々繰り返しながら、憧れの舞台に立てることを夢見て、日々走り続けている。
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テーマ:陸上競技 - ジャンル:スポーツ

コメント
この記事へのコメント
ひかるちゃん 頑張っていることが素晴らしい取材の内容で伝わりました 良かったね😃
ひかるさんの頑張っている様子が 伝わりました 丁寧な取材に感謝しています❤️ありがとう
2022/06/30(木) 17:21:19 | URL | 塗木ばあちゃん #-[ 編集]
Re: ひかるちゃん 頑張っていることが素晴らしい取材の内容で伝わりました 良かったね😃
素敵なコメントをありがとうございます! こちらも取材していて気持ちが清々しく楽しい気持ちになりました。
2022/07/01(金) 10:06:02 | URL | つかさ #-[ 編集]
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