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鹿実VS薩摩中央―「番狂わせ」の真実・第4回
次の1点
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初戦の鶴丸戦で先制アーチを放った5番・揚村。出足は好調だったが、これ以降不振にあえぐ

 五回を終わってスコアは1―0で鹿実がリード。五回裏の薩摩中央の攻撃が終わると、グラウンド整備のための小休止が入る。両チームの試合に出ていない控えメンバーがグラウンドを整備する間、円陣を組んでミーティングをしたり、身体を休めて後半に備える。この間合いが実は大きな意味を持っていることがあって、六回表裏の攻防は「第2の立ち上がり」と言えるほど試合の山場になることが多々ある。

 サッカーやラグビーでいうところの「ハーフタイム」で指揮官はどんな指示を出したのか。「どうだったかな?」。しばし記憶をたどった宮下は「『次の1点が試合を決めるぞ』とは話したような気がしますね」と振り返った。1点リードはしているが、試合の展開は「重い」(宮下)。これを払しょくして勝ちパターンに持っていくには、何より得点を挙げることが起爆剤になる。

 「次の1点、こちらが先に取るか、相手が取るかで、この試合は決まるぞ!」

 そんなことを選手に話してハッパをかけた。終わってみれば、宮下の「予言」通り「次の1点」を先に取ったチームに勝利の女神がほほ笑むことになる。

 六回表、鹿実の先頭打者は主砲・豊住。三回の打席では併殺に倒れたが、それ以降「打てない気がしなくなった」という。前の打席で凡打したことで「自分の悪いところが分かった。技術的には少しタイミングが早くなっていること。気持ち的な部分では、はやる気持ちを抑えて、しっかり見ていけば打てないことはないと思えた」。言葉通り、豊住がセンター前に鋭く低い打球で弾き返し出塁した。
 打つべき打者が打ったことで打線は活気づく。続く4番・田は送りバント。このところ攻撃野球を重視するチームが増えて、3、4、5番の中軸には送りバントをさせないチームもあるが、鹿実は違う。送るべき展開なら打順は関係ない。この時、田にバントを命じたのは、「塁を進める」こともさることながら、宮下の中には「揚村の奮起を促す」という意味も含まれていた。

 揚村は不振にあえいでいた。180㌢、85㌔、枕崎中の出身で、フォロースルーの大きい豪快なスイングは一見穴がありそうだが、調子をつかむと外角のボールもうまく拾って弾き返す器用さも兼ね備えている。大舞台に強く、昨夏の甲子園では2試合で長打2本を含む6安打を放っている。センバツ後の春の九州大会では田が故障していたこともあって4番に座った。「チームの4番は誰か?」との問いに「率は田だが、飛距離なら揚村」と宮下も評する大砲は、初戦の鶴丸戦で特大アーチを放つなど、出だしは好調だった。だが、大会が進むにつれて打撃の調子を崩していく。

 「鶴丸戦が絶好調だったんですが、そこから上げきれなかった。もっと上を目指さなければと焦ってしまって自分の打撃を見失っていました」

 揚村は言う。準々決勝の鹿児島情報戦では無安打に終わって、試合後、球場から五ケ別府の山の上にある学校まで走って帰らされている。汚名返上をかけて挑んだ六回の打席は、崎山の変化球の前に3球三振に倒れた。
 初球をファールしたのは「タイミングがあっていた」が2球目の外角の変化球を見逃し。3球目の同じ外角の変化球を空振り、あえなく凡退する。「力んでしまって、打ち急いだ」と揚村。「打撃では技術的なこと以上に気持ち」を大事にして、打席に立った時は「打席の中にもう一人の自分がいて、その自分と対話する」という雑誌か何かで読んだメンタルコントロールも実践していた揚村だったが、肝心な「気持ち」の部分を最後まで修正しきれなかった。続く野田もカウント2ボール2ストライクからファールで粘ったが空振り三振で、「第2の立ち上がり」でつかんだチャンスをものにできず「次の1点」が取れなかった。試合の潮目は薩摩中央にジリジリと傾いていった。
(続く)
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テーマ:野球全般 - ジャンル:スポーツ

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