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鹿実VS薩摩中央―「番狂わせ」の真実・第5回
悪循環
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6回裏、薩摩中央は5番・原のタイムリーで同点に追いつく

 六回裏、薩摩中央は先頭の小俊雄がライト前ヒットで出塁。五回まで野田に1安打に抑えられていた打線が、流れが変わろうとする絶妙のタイミングでリードオフマンが仕事をしたことで波に乗った。2番・宮脇諒は送りバント。3番・西之園拓馬は二ゴロに打ち取ったが、4番・富満祐太を四球で歩かせ、5番・原優介にタイムリーを打たれて同点にされた。崎山には押し出しの四球まで与えてしまい、鹿実が欲しかった「次の1点」を先に取られたばかりでなく、更にもう1点献上したかたちになった。

 「野田の悪いところが出てしまった」と豊住は感じた。速いテンポでどんどん投げ込むのが野田の持ち味だが、四死球などでリズムが狂うと、心の中を整理できずに、投球が単調になって簡単に打ち込まれてしまう。新チームになってからの1年は、その欠点を修正し、緩い変化球などをうまく交えてアクセントをつけながらリズムを取り戻す術を覚えたはずだったが、肝心なこの試合で「悪い癖」が顔をのぞかせた。
 「思うところにボールが投げられなくていらだっていました」と一塁で守っていた揚村は感じた。こんな時、捕手や野手がタイムをかけて間合いをとったり、守備位置から励ましの声を掛けるのだが、野手もいつも通りにいかない野田に、どう声を掛けていいか分からず戸惑った。「言いたいことはいろいろあるけど、野田もしょっちゅうマウンドに来られたら嫌でしょうから、基本的にはバッテリーに任せていました」と田。
 「いつもなら声を掛けると、反応してくれるのに、この時は自分の世界に入り込み過ぎていて、僕らの声が届いていないようでした」

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 富満を歩かせた直後、黒木はタイムをとってマウンドの野田のもとに駆け寄っている。だがこの時何を話したかは、2人とも「全く覚えていない」。間を取ってリセットし、次の打者への配球に切り替えなければいけないところが、気持ちを修正できないまま、不用意に投げた甘いスライダーを原にセンター前へ、萩木場には初球をレフト前に持っていかれた。続く崎山には1球もストライクが入らず押し出しで勝ち越し点を与えている=写真=

 野田が押し出しで点をやったのは「多分初めて」だ。制球力には自信を持っていたバッテリーの心を占めていたのは、よく思い出せないが「点が取れていない焦り」だった。この年の鹿実は、そもそも試合中に逆転されたことがほとんどない。公式戦の負けは、明治神宮大会決勝の日大三(東京)戦、センバツ準々決勝の東海大相模(神奈川)戦、NHK旗決勝の神村学園戦の3試合のみである。この中で、NHK旗の神村戦は先制しながら逆転負けした唯一の試合だが、このときの先発は徳永だった。野田が先発でマウンドに上がって、先制しながら逆転されるという初体験の状況は、想像以上にバッテリーには精神的な負担を強いた。
 打の柱である豊住には、逆転された六回のことも「大したことはない。あ~野田の悪い癖がまた出ちゃったよ」ぐらいの気持ちで、次どう点を取るか、前向きに気持ちを切り替えられた。だが黒木には「序盤からいつも通りじゃない展開で、1点もやれない」重圧を感じながらリードしていたところに、こちらが点を取れず、相手に2点を与えてしまったショックを払しょくできなかった。七回表の鹿実は2死から黒木がヒットで出るも、平山が倒れて得点ならず。攻守の歯車がかみ合わない悪循環が、七回裏に更なる「痛恨」を鹿実にもたらすことになる。
(続く)

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テーマ:野球全般 - ジャンル:スポーツ

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