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鹿実VS薩摩中央―「番狂わせ」の真実・第19回
オレンジのスタンド
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オレンジ色に染まる薩摩中央の応援席=写真は第130回九州大会県予選準決勝のシーン

 「それまでの試合はなかったのに、準決勝は試合前から涙が止まらなかったんです」

 保護者会長の前園光彦は言う。思えばこの1年間はスタートの食中毒に始まり、なかなか思うような結果を残せなかったチームが、最後の夏で5試合を勝ち抜いて準決勝まで勝ち上がった。まだ戦いは続いているが、親としてはある種の「達成感」を覚えているのも偽らざる心境だった。鹿実の豊住や三塁手の田は「薩摩中央の応援に脅威を感じた」という。実際に三塁側のスタンドにいた応援席の様子はどうだったのか。

 この日、薩摩中央の応援席に駆けつけたのは、全校生徒約430人と野球部保護者、野球部OB、さつま町のファンらである。「うちは1回戦から応援が多いですよ」と神村。町のシンボルのような野球部を応援しようと思うファンが多く、平日の1回戦からでも応援に来るという。準決勝は木曜日。決勝戦は町がバスをチャーターして「即席大応援団」が町からやってきたが、準決勝でそれはない。それでも、三塁側のバックネットに近い場所は、ほぼそういう一般ファンで埋まった。
 一般客の隣が野球部員や学校関係者の応援席に割り当てられている。グラウンドに一番近いところにベンチに入れなかった野球部員19人と野球部OB、ブラスバンド、一般生徒や学校職員、野球部保護者らの応援席となっていた。全校生徒数が1000人を超え、応援団やブラスバンド、チアリーディングなど、これまで県大会はいうにおよばず、野球やサッカーで全国の舞台も数々経験して独自の応援スタイルを確立している鹿実に、見た目ではとてもかなわない。だがグラウンドで戦っている宮脇は「応援は全然負けてなかった」と感じた。
 スタンドにいる前園は特別変わった応援をした記憶はない。もしあるとすれば「お母さんたちの迫力でしょうかね」と笑う。スタンドの保護者は、試合の時チームカラー・オレンジ色のおそろいのTシャツを着ている。「鳴り物」として、オレンジ色のメガホンと、選手のソックスと同じ黄、赤、黄のテープを張って中に大豆を入れたペットボトルを持っている。だが、何よりの「応援グッズ」は母親たちの「声」だった。
 「肝っ玉母ちゃん」たちがそろい、「からいも標準語」で遠慮ない声援を送る。ふがいないプレーが出れば「ないしちょっとよ!」と叱咤激励する。八回に豊住が本塁打を打った時は「ないごて打っとよ!」と大声を浴びせた。「相手チームの保護者から『あのオレンジに負けた』と言われたこともあります。あの試合のお母さんたちの声はマックスでした。もし相手の選手がうちの応援に脅威を感じたとすれば、あのお母さんたちの声かな」と前園は苦笑する。

 試合を見守る親の心境としては「点差が何点あっても、まだ分からない。気は抜けない」(前園)というのが共通認識だった。だからピンチをしのいでも、点が入っても、喜びはしても、浮かれることはなかった。自分たちがプレーには絡めない以上「早く終わってくれ」というのも本音だった。ゲームセットの瞬間まで、スタンドからできる限りの声援と祈りを送り続けることだけは最後まで途切れなかった。
(続く)

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テーマ:高校野球 - ジャンル:スポーツ

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