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論文・「スポーツ」と「お金」に関する考察・中
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・企業がお金を出す理由は?

 旧来の「プロ野球モデル」にせよ、新しい「Jリーグモデル」にせよ、スポーツと企業の間は「広告」を介して成り立っているといっても過言ではない。ではもう一段進んで、企業がそこにお金をかける意味について考えてみたい。
 広告に対する最もシンプルな考え方は、費用対効果である。単純に言えば「100万円の広告費を払ったら、150万円の売り上げがあった」ということである。素朴な疑問として、仮に、あるJ1チームのユニホーム胸部のスポンサー料が1000万円だとしたら、出した企業に1500万円の売り上げが本当に見込まれるものなのだろうか?

 「一般論として、企業が求める費用対効果を実現できるのは、高視聴率が約束され、世間の圧倒的な注目を浴びる男子サッカーの日本代表レベルの媒体価値です」

 鹿児島高専の堂園一・講師は言う。堂園氏は昨年度までの2年間、筑波大学大学院の人間総合科学研究科スポーツプロモーション専攻でスポーツビジネスについて研究。その傍らで日本トップリーグ連携機構(JTL)のサポートスタッフとしても活動をしていた。JTLは、女子サッカーのなでしこリーグ、バスケットのJBL、バレーボールのVリーグなど、互いのリーグの強化活動の充実ならびに運営の活性化を図る一般社団法人。それぞれのリーグやチームの運営などを視察して回った経験がある。堂園氏によれば、今の日本で、プロ野球も含めてチーム単体に単純な「広告塔」としての「媒体力」があるのは男子サッカーの日本代表だけだという。
 プロ野球やJリーグのチームでさえ、出した額に見合うだけの売り上げが期待できないとすれば、企業がそこにお金を出す理由は他に何が考えられるのだろうか? 堂園氏は「CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)的発想に基づいてスポーツを支援する」という理由を挙げる。

 「スポンサーのスポーツに関する予算の出処は、販売促進、広報・宣伝、福利厚生費などです。スポンサーはその支出効果についておおよそ媒体効果、販売促進効果、営業支援、社会貢献、地域貢献の順に考えます。
 媒体効果については、まだまだJリーグのクラブチームも多くは望めないと思われます。観客動員と媒体露出があっての媒体効果ですので、多くのクラブはまだまだ低いと言わざるを得ません。また、販売促進効果についてもある程度の商品数量がさばける見込みが立たなければスポンサーは決断しません。
 今のところ『地域を代表するクラブへの支援を通じて地域社会へ貢献する』というCSR的発想に基づいて、企業はトップクラブを支援しているのが実情と捉えるべきだと考えます」


 例えば、今年度からレノヴァ鹿児島のオフィシャルスポンサーになった米盛病院は、まさにこの考えに基づいている。スポンサー料を払ったからといって、病院に患者が増えて売り上げが上がるわけではないし、それを期待しているわけではない。そもそも病院は利潤を追求するところではない。
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 オフィシャルスポンサーになって一番変化したのは「院内のスポーツに対する意識が変わったこと」だと同病院を運営する社会医療法人・緑泉会の米盛公治理事長=写真=は言う。バスケットに限らず、障害を負ったスポーツ選手のケアに対する医師たちやコメディカルの考え方が変わってきた。患者と会話をする中で「レノヴァの応援をしているんですよ」と話すことで、コミュニケーションが深まることもあった。そういった「目に見えない効果」を期待し、整形外科として鹿児島のスポーツ界に貢献する入口として、レノヴァのスポンサーになる道を選んだ。
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 「CI(Corporate Identity)の役割」を挙げたのは、レノヴァのオフィシャル・ユニホーム・サプライヤーであるアイズ・カンパニーの園田明社長=写真=だ。スポンサーになることで「うちは、そういうプロチームの活動を応援している会社ですよ」ということをアピールする。そうすることで企業のイメージを作ったり、営業先で話題の取りかかりができたりなど、様々な目に見えない効果を期待するのは前述の米盛病院とも重なる部分だ。
 同社は「バイオレーラ」というブランド名で、バスケットのユニホームなどのウエアを販売している。同社の製品を採用しているバスケットチームは県内外に留まらず、本場アメリカの独立リーグ・ABAでもあり、国際規模で活動している。レノヴァのユニホームやシャツ、ベンチコートなどは当然バイオレーラ製品であり、「動く広告塔」の役割を担う。年間数百万円のスポンサー料は「その投資に見合うだけの効果がある」と園田氏は考えている。

・スポーツには何ができるのか?

 「余分なお金があったら、従業員に還元したい。そう考えるのが経営者の感覚だよ」

 数年前、私がレノヴァのスポンサー探しを手伝っていて、高校の先輩が社長をしている会社を訪ねたときに、先輩から言われたひと言である。企業を回ってスポンサーを探すときに「名のある企業なら、地域貢献、地域密着などの理念を説明すればお金を出してくれる」と、どこかで安易に考えていた目を覚ましてくれたひと言だった。鹿児島でプロスポーツを根付かせたいと考えるなら、こう考えるのが当たり前の企業経営者に「うちのチームにこれだけ出していただければ、こんな効果が期待できますよ」ということを粘り強く説いて回らなければならない。

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 「スポンサーというのが今一つ分からないんですよ」

 NPO法人SCCの太田敬介理事長=写真=は言う。SCCは陸上競技のクラブチームを中心に、多世代多種目の総合型地域スポーツクラブ。運営は会員が払う会費と、公の助成金がメーンで成り立っている。例えば陸上クラブの会員から月3000円の会費を徴収することは、元短距離のトップアスリートとして活動し、指導者としても培ってきたノウハウをベースにして「胸を張ってお金を受け取れるものを提供しているという自負がある」。だが、企業から自分たちの活動にお金を頂く意味が見出せない。
 太田理事長があらゆるものと「対等な関係でありたい」と考えるのは12年前の悔しい経験が原点にある。かつて県内のある企業陸上部に所属して、五輪代表になる夢を真剣に追いかけていたが、会社は陸上部の休部を発表。それまでコンマ1秒のタイムを縮めて速く走ることが「プロのスプリンター」である自分の仕事と信じて疑わなかったが「会社から、君たちの活動はいらないものだといわれた悔しさは忘れられないですよ」。陸上やスポーツは本当に「いらないもの」なのか? 「必要とされるもの」になるために何をすればいいのか? そんな問いかけを自らに課して立ち上がったのがSCCだった。
 いずれは「SCCから五輪選手を出したい」という夢がある。「今はお互いのメリットが見えない」が、それを実現する段階になれば企業との関わりも考えるようになるだろう。「どちらか一方が寄りかかってしまう関係なら、長く続かない。お互いにメリットがあって対等な関係が築けるように、自分たちは何ができるかを考えて力をつけていきたい」と太田理事長は語る。

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 「自分たちには何ができるか?」

 太田理事長のこの問いかけは、サッカーにせよ、バスケットにせよ、これから鹿児島でプロスポーツ活動に取り組む人間がまず第1に考えなければならない命題だ。
 「サッカーを頑張る。それ以外に他に何をすることがありますか?」
 県サッカー協会のある幹部が私に話した言葉が思い出される。03年に県協会主導でスポネット鹿児島というNPO法人を立ち上げて、ヴォルカの支援を始めようとした頃、「スポーツ維新の時代」という連載を書いていて、取材して回っていた頃の発言である。その底には「Jを目指して頑張ります」とアドバルーンを上げれば、企業や県民がお金を出して応援してくれるだろうという短絡的な発想がうかがえる。案の定、スポネットは発足当初で活動が行き詰まり、多額の負債を残して2年で消滅した。その後のヴォルカの活動が停滞し、鹿児島からJを目指す活動が大きく後退した根本原因がここにあると私は考える。
(続く)
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