鹿児島在住のスポーツ記者が発信するスポーツ情報サイト

ギャラリーショッピング
論文・「スポーツ」と「お金」に関する考察・下
121227論文9_035
・底にある理念はぶれてはならない

 春や夏の甲子園の代表校が決まると、後援組織などが立ち上がって、その学校のOBなどを中心に寄付を募る動きがある。甲子園出場ともなれば、選手や部員の移動費、滞在費など数百万から場合によっては数千万単位の費用がかかる。あくまで選手とその保護者や学校の「自己負担」が原則だが、その負担を軽減してあげてチームの活動を応援したいという周囲の純粋な善意がそれを支える。お金を出した人たちは、実際にスタンドに足を運んだり、テレビや新聞でチームが活躍する姿を見て一喜一憂してカタルシスを得る。そこには間違っても「お金を出したから一山当てよう」などという発想が介在する余地はないし、あってはならない。


※「上」はこの文字をクリック!

※「中」はこの文字をクリック!
 前述したスポネットが立ち上がった際に、県協会にあった発想はこれに通じるものがあったのではないか?
 「(Jを目指して)サッカーを頑張るから、お金を出して応援して欲しい」
 この発想自体は否定しない。むしろ根本の理念といっても過言ではない。だが、そこに「プロ」として成り立つことを考えるなら、お金を出してくれた企業や人に対して「自分たちは何を返せるか?」、ビジネス的な面も含めたマネジメントを運営する側は常に考えなければならない。
 レノヴァのスポンサーである米盛理事長や園田社長にしても、「鹿児島で頑張るプロチームを応援したい」気持ちが根底に流れている。それが太田理事長の言う「対等な関係」として続けていけるのは、経済的な利益や社会的貢献などのメリットをチームと共同で考えているからだ。

・鹿児島・プロスポーツの現状
121227論文12_035
 もちろん、レノヴァの経営や体制もまだまだ未熟であり、現在の日本のトップリーグであるJBLではなく、2部のJBL2で戦うのが精一杯の運営規模である。年間活動費は約4000万円で、球団の運営会社・スポーツフロンティア鹿児島の大山亮平代表によれば「JBL2の12チームの中では最も少ないレベル」だという。
 13年シーズンから日本の組織自体が改変され、ナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)が発足する。現在のJBL、JBL2は解体してこの傘下に入り、レノヴァは2部リーグにあたるNBDL(D=ディベロプメント)への参入を表明しているが、早い時期に一部リーグで戦えるような体制を作らなければ、大きなムーブメントを呼び込める可能性は低い。とはいえ、08年の発足以来、県内では唯一男子のプロリーグ(サッカーに当てはめるならJ2リーグに相当する)で戦い続けている実績があり、青息吐息の運営を続けながらも、11-12年シーズンではJBL2のプレーオフまで進出した。県内ではどの競技にも先駆けて「プロ化」の道を進んでおり、この灯を更に大きくしていく活動が求められる。
 レノヴァの現在の年間収入は約4000万円。このうちスポンサー収入は約1500万円でチケット収入が約1000万円と大きな割合を占めている。「プロ」を語る上で「チケット収入」があるのは何より大きな特徴だ。不特定多数の一般県民がお金を出してチームを支える一番の象徴である。
 現在、レノヴァの運営で最大のネックは「チケット収入が伸び悩んでいること」(大山代表)。08年の開幕当初は県体育館がフルハウスになる約1800人の入場者があったが、今季のこれまでのホームゲーム平均入場者数は約500人。もっとも開幕当初は年間5試合しかなかったホームゲームが、今季は14試合と増えているので、収入自体は横ばいというのが現状だ。
 鹿児島のバスケットは、レノヴァの前身の鹿児島教員レッドシャークス時代から、やっているバスケットに面白味があって観客を呼んでいた。スーパースターはいなくても、大人が真剣に、ひたむきに、泥臭くバスケットする姿に華があった。個々の能力は高くなくても、「モーションオフェンス」に代表されるようなチームバスケットで正月の全日本総合選手権優勝を目指していた。3月の「バスケットサミット」では、県外、アジアのチームを呼んでリーグ戦を組むなど、バスケットの面白さで観客を動員する下地をこれまで作ってきた。その原点をもう一度思い出して、今季残りのホームゲームで、観客動員をいかに増やしていくかを考える。それが来季のNBDL、近い将来のNBL入りに向けての大きなカギになるだろう。
121227論文10_035
 サッカーは03年以降の「失われた10年」から脱却し、県サッカー協会の仲介で、FCとヴォルカを一本化する方向で話が進められていたが、運営会社の統合で合意できず、13年シーズンも再び2チームで九州リーグを戦うことになった。12月25日の会見によれば、ヴォルカ側が、交渉の大前提だった「これまで両チームが持っていた債権、債務に関しては、それぞれのチームで処理して新チームに引き継がない」という文書にサインできなかったこと、現在FCが持っている下部組織に対して難色を示したことなどが主な理由である。ヴォルカを運営する側の無責任・無覚悟体質には失望を感じるが、いずれにしても来季を戦う両チームには「今度失敗したら、もう2度と鹿児島からJリーグが誕生することはない」危機感と覚悟をもって、命がけで取り組んでほしいものだ。

・運命共同体

 「1本のわら束は弱いけど、2本、3本と重なっていけばものすごい強さになる。クラブとスポンサーはいわばそういう運命共同体みたいなものですよ」

 レノヴァのスポンサーであり、球団代表でもある園田氏は力を込めて語る。甲子園に出た代表校の活躍が、故郷を盛り上げ、誇りと勇気を与えてくれるのと同じように、プロチームの活動を支えることで「鹿児島を盛り上げていこう」とする気持ちをつなげるフラッグシップにレノヴァを育てていきたいという考えだ。
 一方で「応援する側にも責任が生じてくる」とも園田氏は考えている。有名になり世間に名が知られて「お金」が絡んでくる世界には、自己の利益だけを求めて不正なことを考える輩も出てくる。目先のお金に惑わされてしまわないためにも「理念の共有」が何より大事であると園田氏は訴える。
 12月8日に奄美で今シーズン唯一のレノヴァのホームゲームがあった。園田氏の故郷であり活動の拠点である奄美の子供たちに「本物のプロのエンターテイメントを見せてあげたい」と高校生以下の子供たちを無料招待した。当然、無料では球団の利益にならないから、奄美の企業や商店街を回って100を超える団体から協賛を得た。額面は3000円から10万円まで様々だが、協賛をお願いしたところには必ず文書を渡し、「単なる『お付き合い』じゃなくて」(園田氏)趣旨に賛同してもらうことを徹底した。協賛団体は会場のバナー広告や、配布されるパンフレットに名前を掲載して紹介した。
 FCは発足当初から鹿児島市の宇宿商店街と協力し、街のイベントなどに積極的に参加していた。衰退する地域の商店街を何とか元気にしたいという想いと、スポーツで鹿児島を元気にしたいというチームの理念が重なった。ヴォルカは、12年7月に伊佐市と「まちづくりに関する協定」を結んだ。選手が市内でサッカー教室をしたり、九州リーグ公式戦の会場で伊佐市の特産品販売をするなどの協力関係を築いた。こういった「草の根運動」にこそ、地域に根差すプロスポーツの原点があることを、今後の運営に携わる人たちは忘れてはならない。

 知人のMさんの話を最後に紹介したい。Mさんは不動産会社を経営しており、子供が通う中学校のPTA会長をしている。学校のサッカー部が礼儀や姿勢が前向きでなという評判を聞いて、何とかしたいと思っていたところ、定期的に通っている定食屋で知人を介してFCの田上裕選手と知り合った。学校のサッカー部の実情を話し「ぜひ1度指導に来てほしい」とお願いした。田上選手が快く引き受けてくれた上に、子供たちに礼儀やマナーといった面まで厳しく指導してくれた姿に感動し、Mさんはチームの「クラブサポート会員シルバー」になった。
 年会費6万円は会社の広告費から出したものであるが、それを払ったからといって不動産契約が増えたり、何かのビジネスチャンスが広がったということではない。Mさんは田上選手が真剣に子供たちに接してくれた「誠意に対してお金を払いたかった」と言い切る。「根本にあるのは義理人情。そういう気持ちを持った人は鹿児島に多いはず。そういう積み重ねが鹿児島のプロチームを育てていくのではないか」とMさんは考えている。

・成否のカギは「P・M・M」

 「鹿児島のプロスポーツ」を取材しながら、みえてきたのは「P・M・M」の3要素がぶれずにしっかりしているかが、成否のカギだということである。
 まず第1は「パッション」。今までにない新しいものを作りたいという情熱が何より大きな起爆剤になる。やる側がその姿勢をみせないものに誰もついてくることはない。
 次は「ミッション」。どうしてもそれをやりとげなければならないという使命感を持つ。「地域への貢献」「子供たちの未来のために」…ビジョンを明確にして、責任と覚悟を決めて取り組む姿勢を明確に見せなければならない。
 3番目が「マネジメント」だ。チームをどう運営していくのか、活動資金をどう確保するのか、支えてくれる人に対して何をお返しできるのか…そこに明確な理念を持って実行できるだけの力が求められる。
 これまでバスケットやサッカーなど鹿児島で「プロ」を目指す活動をみながら、どうしても1番目のPと2番目のMまでは明確でも、3番目のマネジメントが、まだ大きなムーブメントを起こすところまで来ていないのが現状と私は考える。
121224レノヴァ勝利_035
 12月23、24日は2012年最後のレノヴァのホームゲームが鹿児島市の県体育館であった。約1カ月ぶりにレノヴァの試合をライブで見ていて、シンプルに楽しいと思えた。やっているバスケットに一喜一憂しながらもワクワクするし、普段からよく知っている選手たちが、全国の強豪相手に立ち向かっていく姿を間近で応援するのは、理屈抜きで胸が熱くなった。何より同じ想いを、会場にいたたくさんの人と共有できたのがひたすらうれしかった。いろいろ難しいことを書いてきたが、底に流れるのは「楽しさ」や「喜び」であるのは、どのスポーツも同じだ。

 「夢」や「理想」を語るだけでは飯は食えない。だが「夢」や「理想」がなければ、人として生きる楽しみがない。今鹿児島で、新しいスポーツのあり方を模索する活動が定着することは、「学校体育」「企業スポーツ」がスタンダードだった日本のスポーツ界に、本物の「維新」をもたらすと信じている。

スポンサーサイト

テーマ:バスケットボール(日本) - ジャンル:スポーツ

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://spokago.blog68.fc2.com/tb.php/857-38fee861
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック