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スポーツコラム「年中夢求」第23回
ことの本質を見ずして語るなかれ
「体罰問題」報道に思う

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 「体罰」に関する「スタンピード」が止まらない。予想通り、鹿児島でもあったことが「発覚」した。文部科学大臣は「日本のスポーツ界の最大の危機」と声明を出した。数日前のフジテレビ朝の情報番組「とくダネ」では、「かつて体罰を受けたことがある」という元バレーボール選手の30代女性が匿名で過去の体験を話していた。
 下着姿で練習をさせられたとか、「病院に行くので練習に遅れる」と顧問に報告すると、顧問は部員全員の前で「こいつは練習よりも自分のことが大事なんだ!」と罵倒し、お腹を蹴られたとか…それはもはや「体罰」を超えた「虐待」でありそのこと自体は、断罪されなければならない問題である。昔に比べれば、今はそんなことは格段に少なくなったし、そういうことが「異常」だとなっていくのは正しいことである。

 それでもなお、そういう報道に接して違和感を覚えるのはなぜか、考えてみた。もしその女性が体験したようなことが、程度の差はあれ、全国のバレー部で「日常茶飯事」だったとするならば、フジテレビはそのことに気付かなかったのか? 長年「春高バレー」を主催するフジテレビは、その頃も他のメディア以上に日常の練習から高校バレーの現場にいたはずである。「強豪」と呼ばれる高校の練習には、今なら前述した女性のような「体罰」や「虐待」と思われても仕方がないような練習を全くやっていなかったのだろうか? それを「美談」としては取り上げてこなかったと言い切れるだろうか?

 それはフジテレビだけの話ではない。玉木正之氏は20年以上前、高校野球の現場を取材し「何度も体罰の現場を見た」として様々な例を紹介し「今はそれが『指導死の温床』と気づけなかった想像力のなさと、告発する勇気を持てなかったかつての自分の情けなさを恥じ入るほかない」と書いている(13年2月4日、南日本新聞)。さらには「一緒に見ていた記者の所属するメディアが全国大会の主催社で、暴力を非難するどころか体罰をふるう彼らを『名監督』とたたえていたことも、明らかに異常というほかない出来事だった」とも。

 柔道女子日本代表の監督の問題では、2月5日の南日本新聞社会面に、女子15選手がなぜ監督の暴力行為などを告発したのか、代理人弁護士の会見から分かった詳細が掲載されていた。
 その中で「告発に至る過程では、昨年5月に起きた出来事が大きな要因だった」と述べている。「5月の出来事」とはロンドン五輪代表最終選考会だった全日本選抜体重別選手権の後、代表候補選手がホテルの一室に集められた。隣に設けられた記者会見場では当時の強化部長が代表選手を呼び上げていた。その際にテレビの生中継が選手の表情を大写しにしたという。「複数の女子代表選手が『テレビ局にこの企画を許した全柔連が許せない』と憤った」。
 企画を立てたテレビ局がどこか分からないが、ここにメディアとスポーツのいびつな関係が象徴されていないか。メディアはスポーツがもたらす「感動」を売りにしてきた。そのこと自体を否定しようとは思わない。ただ、日本の場合は高校野球にせよ、高校バレーにせよ、あるいは五輪の代表選考会にせよ、メディアが「主催者」に名を連ねた。そのことで「ジャーナリズム」としての機能を十分に果たしてこなかった。

 前述した女子バレー選手のようなことも、「厳しさに耐え忍び、勝利をつかんだ」美談にして、メディアは視聴率や購読部数を稼いできた。その「本質」を理解した上での報道でなければ、今掌を返したように「体罰根絶キャンペーン」を張っても説得力がない。
 暴力をふるう教師を「熱血」とたたえたテレビドラマやアニメを昔は当然のように流していた時代もあった。それが当たり前だった「時代背景」も分析する必要がある。今の流れをみていると「体罰教師」をどんどんあぶりだして、「スケープゴート」にしているようなおぞましさを感じる。あちこちで「ここでも体罰が」的なニュースを見ているとまるで今の学校現場は降って湧いたように体罰が横行しているかのような気にさえなってくる。まるで1本の「木」が腐っていることだけをセンセーショナルに取り上げて、あたかも「森」全体が腐っているかのような印象を作り出している。私も含めて、伝える側はそのことに対する「自己反省」から始めるべきではないだろうか?
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2013/02/16(土) 17:04:51 | | #[ 編集]
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